法律豆知識(107)、旅行業者も下請保護法の対象に―警告された例も
<はじめに>
旅行業にも下請保護法が適用されることはご存知だろうか。前回は特定商品取引法について、旅行業にも適用される場合があることを述べたが、下請保護法(正式には「下請代金支払遅延等防止法」)が適用されることも忘れないでほしい。公正取引委員会の調査が入り、報告を求められたことのある旅行業者も多いはずだ。
<法の概要>
下請保護法は、もともとはメーカーや物品の修理等の分野で、下請業者が代金の支払を不当に延ばされたり、減額されたり、返品されたりすることがないようにするための法律であった。経済的優位にある発注業者に対し、経済的に弱い立場の下請業者を保護しようとするものである。
この下請保護法が平成15年の改正法により、対象業績が情報成果物(プログラム、放送番組等)の作成や、役務(すなわちサービス。運送、ビルメンテナンス等)の提供業務にまで広げられた。その結果、旅行業はサービス業そのものなので、当然対象業種となったわけである。
役務の提供も対象なので、自ら企画し、催行するパッケージツアーの場合、保護の対象となるのは運送や宿泊サービス、その他のサービスを提供する下請業者になり、さらには手配業務者も保護対象に含まれることになる。
<保護対象の事業者は?>
下請保護法は、弱い立場の下請企業を保護するためなので、下請企業が発注者より経済的に力がある場合には適用されない。親事業者(発注者)の資本金が5000万円以上の時は、保護される下請事業者の資本金は5000万円以下であることが必要である。親事業者の資本金が1000万円以上5000万円以下の時は、資本金が1000万円以下の企業が対象となる。
<規制の内容>
(1)親事業者の義務は以下の通りである。
・発注時は直ちに、取引条件などを書いた書面(注文書)を交付すること
・注文した内容等について記載した書面を作成し、2年間保存すること
・注文や注文サービスの受取日から60日以内で、できるだけ早い日を代金
の支払期日と定めること
・注文品や注文サービスの受取日から60日を過ぎても代金を支払わなかっ
た場合は、未払分に遅延利息分(年率14.6%)を加算して支払うこと
(2)親事業者が行ってはならないことは、以下の通りである。
・一旦注文した物品やサービスの受取を自社の都合で拒むこと
(注文した物品、サービスの受領拒否)
・注文品やサービスの受取日から60日以内に定めた支払期日までに、その
代金を支払わないこと(下請代金の支払遅延)
・注文したあと、自分の都合でその代金を減額して支払うこと
(下請代金の減額)
・受け取った注文品を自分の都合で返品すること(受け取った物品の返品)
・注文時に、一般的な取引価格より著しく単価を不当に定めること
(買いたたき)
・自社製品等の物品や役務を強制的に購入させること
(物・役務などの強制購入)
・一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交
付すること(割引困難な手形の交付)
・有償で支給した原材料等の対価を、下請代金の支払期日より早い時期に
相殺したり支払わせること(有償支給原材料等の対価の早期決済)
・金銭や役務、その他の経済上の利益を、不当に提供させること
(不当な経済上の利益提供要請)
・不当に発注内容を変更したり、やり直しをさせること
(不正な給付内容の変更及び不当なやり直し)
・中小企業庁または公正取引委員会への通報を理由として不利益な取扱い
をすること(行政庁へ知られたことを理由とした報復措置)
<違反例>
平成18年6月6日に、公正取引委員会事務総局東北事務所から発表された「平成17年度における東北地区の下請法の運用状況について」とする報告書で、主な警告例として、旅行業のケースが記載されている。その内容は、「海外の宿泊施設等の手配業務を下請事業者に委託しているJ社は、委託取引先の登録制を採っているが、登録された下請事業者に対し、「協定料」と称して金銭の提供を要請していた。」とのことである。
本件は、前述の禁止行為のなかの「物・役務などの強制購入」にあたる。発注者は、自己の経済的優位な立場を利用して、弱い立場の下請に対し、名目の如何を問わず、物やサ−ビスを強制的に購入させてはいけないのである。
<違反するとどうなるか>
下請保護法は、公正取引委員会が所轄である。同委員会は、両当事者に必要な報告をさせることができ、また立入検査権を持っている。違反が軽微であれば、同委員会から「警告」がなされ、「改善報告書」の提出が求められる。
違反が重大であれば「勧告」がなされ、「改善報告書」の提出を求められる他、会社名と違反行為が「公表」される。また、親事業者に対しては、契約時に所定の事項を記載した書面を作成しなかったり、給付の受領や代金の受領の書類を作成しなかったり、保管しなかったりすると50万円以下の罰金に処せられる。検査を拒み、妨げ、著しく忌避した場合や、報告徴収にあたって報告書を出さなかったり、虚偽の報告をした場合も、50万円以下の罰金に処せられる。
旅行業にも下請保護法が適用されることはご存知だろうか。前回は特定商品取引法について、旅行業にも適用される場合があることを述べたが、下請保護法(正式には「下請代金支払遅延等防止法」)が適用されることも忘れないでほしい。公正取引委員会の調査が入り、報告を求められたことのある旅行業者も多いはずだ。
<法の概要>
下請保護法は、もともとはメーカーや物品の修理等の分野で、下請業者が代金の支払を不当に延ばされたり、減額されたり、返品されたりすることがないようにするための法律であった。経済的優位にある発注業者に対し、経済的に弱い立場の下請業者を保護しようとするものである。
この下請保護法が平成15年の改正法により、対象業績が情報成果物(プログラム、放送番組等)の作成や、役務(すなわちサービス。運送、ビルメンテナンス等)の提供業務にまで広げられた。その結果、旅行業はサービス業そのものなので、当然対象業種となったわけである。
役務の提供も対象なので、自ら企画し、催行するパッケージツアーの場合、保護の対象となるのは運送や宿泊サービス、その他のサービスを提供する下請業者になり、さらには手配業務者も保護対象に含まれることになる。
<保護対象の事業者は?>
下請保護法は、弱い立場の下請企業を保護するためなので、下請企業が発注者より経済的に力がある場合には適用されない。親事業者(発注者)の資本金が5000万円以上の時は、保護される下請事業者の資本金は5000万円以下であることが必要である。親事業者の資本金が1000万円以上5000万円以下の時は、資本金が1000万円以下の企業が対象となる。
<規制の内容>
(1)親事業者の義務は以下の通りである。
・発注時は直ちに、取引条件などを書いた書面(注文書)を交付すること
・注文した内容等について記載した書面を作成し、2年間保存すること
・注文や注文サービスの受取日から60日以内で、できるだけ早い日を代金
の支払期日と定めること
・注文品や注文サービスの受取日から60日を過ぎても代金を支払わなかっ
た場合は、未払分に遅延利息分(年率14.6%)を加算して支払うこと
(2)親事業者が行ってはならないことは、以下の通りである。
・一旦注文した物品やサービスの受取を自社の都合で拒むこと
(注文した物品、サービスの受領拒否)
・注文品やサービスの受取日から60日以内に定めた支払期日までに、その
代金を支払わないこと(下請代金の支払遅延)
・注文したあと、自分の都合でその代金を減額して支払うこと
(下請代金の減額)
・受け取った注文品を自分の都合で返品すること(受け取った物品の返品)
・注文時に、一般的な取引価格より著しく単価を不当に定めること
(買いたたき)
・自社製品等の物品や役務を強制的に購入させること
(物・役務などの強制購入)
・一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交
付すること(割引困難な手形の交付)
・有償で支給した原材料等の対価を、下請代金の支払期日より早い時期に
相殺したり支払わせること(有償支給原材料等の対価の早期決済)
・金銭や役務、その他の経済上の利益を、不当に提供させること
(不当な経済上の利益提供要請)
・不当に発注内容を変更したり、やり直しをさせること
(不正な給付内容の変更及び不当なやり直し)
・中小企業庁または公正取引委員会への通報を理由として不利益な取扱い
をすること(行政庁へ知られたことを理由とした報復措置)
<違反例>
平成18年6月6日に、公正取引委員会事務総局東北事務所から発表された「平成17年度における東北地区の下請法の運用状況について」とする報告書で、主な警告例として、旅行業のケースが記載されている。その内容は、「海外の宿泊施設等の手配業務を下請事業者に委託しているJ社は、委託取引先の登録制を採っているが、登録された下請事業者に対し、「協定料」と称して金銭の提供を要請していた。」とのことである。
本件は、前述の禁止行為のなかの「物・役務などの強制購入」にあたる。発注者は、自己の経済的優位な立場を利用して、弱い立場の下請に対し、名目の如何を問わず、物やサ−ビスを強制的に購入させてはいけないのである。
<違反するとどうなるか>
下請保護法は、公正取引委員会が所轄である。同委員会は、両当事者に必要な報告をさせることができ、また立入検査権を持っている。違反が軽微であれば、同委員会から「警告」がなされ、「改善報告書」の提出が求められる。
違反が重大であれば「勧告」がなされ、「改善報告書」の提出を求められる他、会社名と違反行為が「公表」される。また、親事業者に対しては、契約時に所定の事項を記載した書面を作成しなかったり、給付の受領や代金の受領の書類を作成しなかったり、保管しなかったりすると50万円以下の罰金に処せられる。検査を拒み、妨げ、著しく忌避した場合や、報告徴収にあたって報告書を出さなかったり、虚偽の報告をした場合も、50万円以下の罰金に処せられる。