「ふるさと住民」は旅行会社の新市場になるか 日本旅行、楽天と「寄付・来訪・地域活動・再訪」の循環構築へ

  • 2026年8月18日

 日本旅行が、国が創設を進める「ふるさと住民登録制度」を新たな旅行需要と地域ソリューション事業につなげようとしている。楽天グループが立ち上げた「ふるさと住民応援コンソーシアム」に2026年3月から参画し、地域の担い手活動を旅行者が参加できる着地型コンテンツとして造成。ふるさと納税や旅行券、企業研修、教育旅行などを入口に、単発の観光ではなく、同じ地域を繰り返し訪れる仕組みを構築する考えだ。

 8月4日に開かれた「首長サミット2026 LG30」では、制度のモデル事業に取り組む自治体の事例や課題も明らかになった。当日は26自治体が参加し、内閣官房、総務省、国土交通省、農林水産省などの関係者も出席した。 制度の実装が進めば、旅行会社には交通・宿泊の販売だけでなく、担い手活動の造成、地域事業者との調整、参加者の受け入れ、再訪促進までを担う新たな商流が生まれる可能性がある。

「ふるさと住民応援コンソーシアム」の共同記者会見に登壇した参画企業の担当者。左から日本旅行、タイミー、楽天グループ、LIFULL、おてつたび

「観光客」から、地域で活動する「住民」へ

 ふるさと住民登録制度は、居住地とは別に関わりを持つ自治体へ登録し、地域との継続的な関係を可視化する仕組み。現在の制度設計案では、要件を設けず登録できる「ベーシック登録」と、自治体が指定する担い手活動を年3回以上行うことを基本要件とする「プレミアム登録」を設ける。プレミアム登録は3団体までとし、活動に必要な交通・宿泊費などの支援も想定されている。

 重要なのは、単に別の地域の「住民」を名乗れる制度ではなく、登録後に実際の活動を促す設計になっている点だ。地域の農林水産業、祭り、環境保全、地域事業、ボランティアなどへの参加が想定され、それには地域への移動と滞在が伴う。

 旅行業界から見れば、ここに従来とは異なる需要が生まれる。観光地を一度訪れて終わるのではなく、同じ地域で複数回活動すること自体が制度上意味を持つためだ。

 日本旅行事業共創推進本部の本間恒志氏は首長サミットで、一過性の旅行では宿泊や食事、観光だけで終わり、地域との交流が生まれにくいと指摘。地域住民や事業者と接点を持つ体験を入口として、「次の来訪につながるストーリーをつくる必要がある」との考えを示した。

日本旅行、地域資源を「担い手活動」に

 日本旅行が制度を通じて担おうとしているのが、地域に存在する課題や資源を、地域外の人が参加できるプログラムへ変換する役割だ。

 同社は全国47都道府県に拠点を持つ強みを生かし、地域資源や日々の営みを参加しやすい担い手活動としてデザインする。さらに、ふるさと納税返礼品、企業向けの越境型研修、中高生向けの探究学習などを組み合わせて地域への来訪をつくり、その後も継続的に関わる人を増やす考えだ。首長サミットでは、本間氏が「何度でも足を運び、地域に関わるふるさと住民を一緒に育てていきたい」と説明した。

ふるさと住民登録制度を活用した事業構想を説明する日本旅行 事業共創推進本部 副本部長の本間恒志氏

 具体化しているのが、楽天との「担い手活動付き日本旅行 旅行券」だ。両社は7月30日、ふるさと納税の寄付者が地域を訪れ、担い手活動を体験できる旅行券を共同開発すると発表。第1弾として山梨県北杜市と長野県上田市で取り扱う。楽天がふるさと納税のマーケティングを、日本旅行が着地型コンテンツの企画・手配を担い、伝統工芸や農家との交流、収穫体験などを候補に商品造成を進める。寄付受付は2026年内に順次始める予定としている。

 日本旅行がすでに展開する「地域限定旅行クーポン」も活用する。交通費や宿泊費に充当できるクーポンと担い手活動を組み合わせ、ふるさと納税の寄付を現地への来訪と地域消費につなげる考えだ。

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