星野佳路氏「OTAは絞って深く組む」、アゴダCEOと語る訪日市場の次の課題

-今後の日本市場をどう見ていますか。

モーゲンシュターン氏 日本市場の展望は非常に楽観的に見ている。世界中で多くの人に「どこに行きたいか」と聞くと、日本に行きたいという答えが返ってくる。日本政府も訪日客6000万人という高い目標を掲げており、達成可能性はある。ただし、自然に実現するものではない。

 今後、日本が取り組むべき領域の一つはインフラと考えている。主要都市以外の地域に行きやすくするため、交通を含む受け入れ環境の整備が重要になる。もう一つは翻訳。単に言語を置き換えるだけでなく、文化的な文脈を伝える必要がある。それぞれの旅行者にとって使いやすい形で情報を届けることが求められる。

星野氏 日本のインバウンドは過去10年から15年で大きく成長してきたが、現在の数字は実力以上に押し上げられている面があると見ている。背景には円安があり、世界的に旅行先の選択肢が限られる中で、近年は日本が安全で魅力的な旅行先として見られていることもある。

 この状況が将来変化してきた場合、訪日客数が下がる可能性もある。だからこそ、今のうちに本当の実力を高める必要がある。課題は二次交通や海外旅行者にとっての予約のしにくさ、観光産業の人手不足など。特に観光産業の給与水準を高め、人材を確保できる産業にしていくことが重要だ。

 6000万人という数字をただ追うのではなく、一度成長が落ち着く期間に観光産業全体の基礎力を高めるべきと考えている。

-アゴダは今後、星野リゾートとの取り組みで何を強化していくのでしょうか。

モーゲンシュターン氏 方向性の一つは「コネクテッドトリップ」。旅行者は宿泊施設だけでなく、航空券、交通、体験などを含めて旅行全体を事前に計画したいと考えている。アゴダとしても、フライトや交通、体験を含めた予約ができるプラットフォームを整えていきたい。

 星野リゾートの施設には、地方にある魅力的な宿も多い。そこへ旅行者を送るには、宿泊だけでなく交通手段の手配が重要になる。AIアシスタントを活用し、旅程作成や天候に応じた予定変更なども含めて、旅行者が安心して地方に足を延ばせる環境をつくりたい。

-生成AIはOTAビジネスにどのような影響を与えるのでしょうか。

モーゲンシュターン氏 生成AIはリスクというより機会。これまでは、旅行者が検索エンジンや旅行ブログなどで情報を探し、その後、価格や品ぞろえ、信頼性を見て予約サイトに移動していた。現在はChatGPTやGeminiのようなAIを使う人が増えているが、最終的に旅行者が予約プラットフォームに来る流れは変わっていない。

 むしろ、生成AIによって旅行提案や旅程作成がしやすくなり、コネクテッドトリップの実現が早まる。アゴダのプラットフォーム内でもAI機能を実装し、顧客の好みを学びながら、より適した目的地や体験を提案できるようにしていく。ホテルだけでなく、フライトやアトラクションなど複数の予約を行う利用者も増えており、生成AIはこの流れを加速させると考えている。

-現状でのアゴダの強みはどこにあるのでしょうか。

モーゲンシュターン氏 強みはいくつかあるが、一つは長年にわたり多くのデスティネーションと顧客基盤を築いてきたこと。もう一つは、顧客にベストプライスを提供しようとする姿勢だ。簡単に聞こえるかもしれないが、実行には多くの取り組みが必要であり、それが顧客の信頼につながる。

 さらに、ローカリゼーションも大きな強みとなる。日本向け、インド向け、中国向けのアゴダのサービスは、それぞれ異なる形になっている。各国の習慣や文化に合わせて調整するには技術開発の工数がかかるが、アジア太平洋地域で事業を続けるには不可欠。日本の顧客には日本らしいプラットフォームとして受け止められ、他の文化にも適応できるよう取り組んでいる。

-ありがとうございました。