星野佳路氏「OTAは絞って深く組む」、アゴダCEOと語る訪日市場の次の課題
アゴダと星野リゾートは、2025年秋に開始したパートナーシップを通じ、訪日旅行者向けの販売強化に取り組んでいる。星野リゾート代表の星野佳路氏とアゴダCEOのオムリ・モーゲンシュターン氏はこのほど対談し、提携の背景、予約状況、OTA戦略、今後の訪日市場の課題について語った。星野氏は、OTAとの関係について「数を広げるのではなく、信頼できる相手と深く組む」方針を強調。モーゲンシュターン氏は、地方誘客に向けて交通や体験を含む「コネクテッドトリップ」の重要性を示した。
星野氏 きっかけは、実際には予約が入っていないのに、アゴダで予約していると主張する顧客が到着するトラブルが頻繁に発生したことだった。複数のチャネル間で在庫が共有される仕組みが海外では存在しており、それを利用して在庫を保有していない業者が販売活動をしているケースがあり、問題につながっていた。
その解決に向けてアゴダと対話したところ、同社のエンジニアチームの対応が課題を理解し、改善に向け迅速に動いた点に、同社の技術力とポテンシャルを感じた。加えて、東南アジアや東アジアでのマーケットシェアを見ても、今後一緒に取り組むべき相手だと判断した。
モーゲンシュターン氏 アゴダは、最もローカルでありながらグローバルなプレイヤーでありたいと考えている。ローカルであるということは、その市場の文化、人、フィードバックを重視するということ。今回の件では、課題に対して建設的で明確、かつ実行可能な形で対応する必要があった。
パートナーシップにおいて最も重要なのは信頼。フィードバックを受け、エンジニアリングの力を活用して速やかに改善し、結果を数字で示すことに取り組んだ。それが星野リゾートとの信頼関係の基礎になった。
星野リゾート 吉川明希氏(マーケティンググループチャネル戦略担当) 販売は2025年10月末に開始し、11月ごろから本格的に動き始めた。開始直後は徐々に伸びていく状況だったが、現在は毎月、取扱額の最高値を更新している。販売開始からまだ半年程度であり、今後も伸びしろは大きいと見ている。
星野氏 重要なのは、単に金額が伸びていることだけではない。以前のように他社経由の在庫がアゴダ側に流れる形ではなく、直接契約に基づく予約が伸びている点が大きい。これにより、システム上のトラブルを抑えられるだけでなく、両社でプロモーションにも取り組みやすくなる。
モーゲンシュターン氏 直接取引になることで、顧客により良いサービスを提供できる。新しいアイデアを実行する際にも、複数の関係者を説得する必要が少なくなり、スピードが上がる。現在はまだ表面的な取り組みにとどまっており、やりたいことは非常に多い。今後さらにビジネスを伸ばせると考えている。
星野氏 私たちは基本的に、OTAとの契約数を絞るべきだと考えている。OTA同士は競争しており、あらゆるOTAに同じように商品を出すと、どの会社とも特別な関係を築きにくい。国内でも星野リゾートのサブブランドごとに契約先を変えている。
海外市場でも考え方は同じ。アゴダと仕事をするのであれば、単なる多数ある販売チャネルの一つではなく、信頼関係を持った深いパートナーとして取り組みたい。アゴダに星野リゾートを大事にしてもらいたいし、私たちもアゴダのチャネルを大事にしたい。
一方で、直販を重視する方針は変わらない。インバウンド市場でも星野リゾートの直予約比率は高く維持しており、欧米では現地のプロモーションエージェントを通じて情報発信を行い直販につなげている。ただ、海外では国内ほどブランド認知が高くないため、顧客接点を増やす意味で、強いOTAと深く組むことは重要となる。
星野氏 アジア市場は地理的に近くリピーターが増えていくと予測している。日本全体では訪日客の増加率はしばらく鈍化するステージに入ってきており、リピーター比率を高め、顧客を維持していくことが重要になっている。
その点で、東南アジアや東アジアに強いアゴダと関係を築く意味は大きい。一定のシェアを持つチャネルと連携することで、訪日旅行者との接点を広げられる。
また、需要の平準化という観点でもインバウンドは重要となる。東南アジア各国にはそれぞれ異なる時期に大型連休があり、訪日旅行者は平日にも旅行する。特定の国や時期に偏らず、複数市場から集客することが、宿泊需要の平準化につながる。
» 次ページ:星野氏が語る訪日市場の危機感、アゴダは地方送客に意欲



