【Founder’s Eye】ラグジュアリーではなくクオリティ-「富裕層」という言葉を聞かなかった欧州出張

  • 2026年7月29日

今回の出張で最も印象的だったのは「富裕層」という言葉をほとんど聞かなかったことだ。
しかし、訪ねた先の大半は、いわゆる富裕層を対象にビジネスをされている人たちだった。

7月初旬、フィンランド・英国・フランスを訪れた。

今回の目的は、フィンランドは元フィンエアーのサカリさんのお墓参りと、彼との共通の友人で日本とフィンランドの交流を担っている知人との情報交換。
ロンドンでは現地の訪日を扱う旅行会社、JNTO、ガイドの方々へのインタビューや情報交換。
パリでは日系のランドオペレーターや旅行業界以外の経営者と日本進出等に関する意見交換。

先ずは、読者の中にもサカリさんと親しくされていた方は多いと思うので、お墓参りの話から。
田園の中の素敵な墓地で彼は眠っています。
スモーカーだった彼に、煙草とお花を手向け、しばしの時間を過ごさせて頂きました。
国を越えて続く縁こそ、観光産業の財産なのかもしれない。
改めて、彼との別れが早すぎたことを痛感した。

ヘルシンキ郊外の静かな墓地に眠るサカリ氏

その後、フィンランドの知人と日本酒の輸入や日式カレーレストラン(CoCo壱番屋のような)の誘致に関して、意見交換。
※読者の方でCoCo壱番屋等、海外でのフランチャイズ展開をされている会社とコネクションがある方は是非、教えてください

ロンドン現地の旅行会社でお聞きした話は、別途インタビュー記事として詳細を掲載しますので、個人的に一番印象的だった事だけ、ここではお伝えします。

いわゆる富裕層を主たる顧客とする会社さんなのですが、彼らは「富裕層」という表現はせず自らの顧客を「知識層」「文化人」として認識しており、顧客は「ラグジュアリー」ではなく「クオリティ」を求めているという。
また、彼らの顧客は高価なものを求めているのではなく、知的好奇心を満たし、自らの価値観を広げる体験を求めているという。
これは一見、似たようなもののようだが、自らの顧客の客層と何を求められているかを明文化し、商品やサービスはそれをベースに作り、提供する事で顧客からの支持を得ているのだと納得した。
だからこそ、日本においても単なる高級旅館やミシュランのレストランではなく、人や文化、技術の背景に触れられる体験が求められているのだろう。重要なのは価格の高さではなく、その体験にどれだけの物語や知的価値があるかだ。

JNTOロンドン事務所にもお邪魔し、お話を伺い、公的機関の現地オフィスの意義や貢献は大きいと再認識した。
単に日本や各地域を紹介するだけでなく、日本側の取り組みに対して、単独ではなく広域連携や複数事業者での展開の重要性を示し、その実現を後押しする役割も果たしている。こうした機能は現地事務所だからこそ発揮できる価値だろう。
旅行業界の方に、JNTOの現地での活動をより良く知っていただく為、近い内にインタビューをさせて頂き、そこで詳しくお伝えしたいと思っています。

パリでは先ず、旧知の日系旅行会社の経営者とお会いした。
コロナ前はいわゆるシリーズ物の現地手配が主だった会社だが、今は手厚いケアを求めるビジネスパーソンや富裕層に対するサービスに軸足を移している。
ロンドンで耳にした価値観は、パリでも共通しているように感じた。言葉として聞いたわけではないが、こちらの会社もまた「ラグジュアリー」ではなく「クオリティ」を重視しているように見えた。

その他、日本をはじめ世界中からデザインを学びに来る人々に学びの場を提供している親日家のフランス人デザイナーともお会いした。また、既に東京に出店している宝飾ブランドの関係者とも意見交換を行った。日本刀の展示販売会や若手デザイナー作品の日本紹介など、旅行の枠を超えた様々な可能性について話が広がった。

欧州で出会った人々との対話を通じて改めて感じたのは、観光は単に人を運ぶ産業ではなく、人と人、文化と文化、産業と産業をつなぐ仕事だということだ。

日本には世界に誇れる文化や技術が数多く存在する。これらを旅という形でどう伝えるか。その可能性は、私たちが考えている以上に大きいのかもしれない。

今月の二軒(出張メシ、どうしても一軒に絞れなかった)

■Canard & Champagne

Canard & Champagne

パリ最古の「パサージュ・デ・パノラマ」 (屋根付き商店街)にある、極上の鴨とシャンパーニュをリーズナブル(パリにしては…)に楽しめる、雰囲気も抜群の筆者一押しレストラン。
鴨のコンフィーとスクリネミモザは必食。
早い時間なら予約無しでも入れる可能性はあるが、事前予約の方が安心。
席は断然テラス席がお勧め(特にスモーカーには)。

■Brasserie LIPP

Brasserie LIPP

130年の歴史を誇る、パリの名門ブラッスリー。
知人のシェフのお墨付きで訪問。
前菜からデザートまで素晴らしいの一言、スープデポワゾンとエスカルゴは必食。
ギャルソンも皆、気さくで親切。
予約必須。

岡田直樹
エフネス(トラベルビジョン)Founder。旅行業界向けメディアの運営を軸に、観光領域の事業開発に取組む。