「サウンド・オブ・ミュージック」60周年のザルツブルク、モーツァルトやクリスマス市などを軸に外客誘致を展開

 ザルツブルク観光局はこのほど旅行会社を対象に研修旅行を実施し、音楽関係のツアー造成及びアレンジあるいは一般向けの観光旅行を造成する旅行会社らが参加した。今回の研修旅行はザルツブルク観光の主要テーマの一つである映画「サウンド・オブ・ミュージック」の公開60周年の節目を機に行われたもの。映画が根強い人気を持つ米国、日本をはじめとするアジア市場の集客に対し、ザルツブルクへの送客を図ろうという狙いがある。ザルツブルク市観光局局長のベアテ・カスナー氏に話を伺うとともに、同市の現状をレポートする。(ライター:西尾知子)

ザンクト・モントゼーの秋景色、郊外の紅葉黄葉も自然豊かで見事

■ 日本市場は僅かずつ回復、訴求力の高いテーマを軸にプロモーションを展開

 カスナー氏によると、2024年にザルツブルク市を訪れた観光客は約177万人、宿泊数は約314万泊。そのうち外国人客は約131万人、宿泊数は約242万泊となっている。日本市場の動きについて過去20年(2004〜2024年)を見ると、2006年のモーツァルト生誕250年に8万6426泊を記録し、これがピークとなっている。以後若干減少はしつつも、ほぼ横ばいレベルで推移してきたが、2020年のコロナ禍で激減した。

 しかし、2023/24年は+23%、2024/25年度も+18%の2.2万泊と僅かずつ回復傾向にあることから、ザルツブルク市では主要販売テーマの一つで日本にも人気の高い映画「サウンド・オブ・ミュージック」の関連プロモーションを強化。去る大阪万博でプロモーション展開を行ったほか、世界遺産に登録されているザルツブルクのマリオネット劇場による同作品の公演を通して認知度向上を図った。

100年以上の歴史を持つザルツブルクのマリオネット劇場。繊細な動きは代々伝わる職人技。世界文化遺産に登録されている

 今後も「日本にレップを置き、オーストリア政府観光局との協力のもと、B2B、B2Cの両面で持続可能な市場展開を図っていく」とし、「サウンド・オブ・ミュージック」のほか世界遺産都市、モーツァルト生誕地、ザルツブルク音楽祭などの音楽都市、クリスマスマーケット/「きよしこの夜」生誕の地という5つの強みを生かして、プロモーションを行っていくという。

■ 日本市場への3本柱「モーツァルト」「サウンド・オブ・ミュージック」「きよしこの夜」

 このたびの研修旅行は日本市場の主要なテーマとなる「モーツァルト」、「サウンド・オブ・ミュージック」、「『きよしこの夜』誕生の地」の3点を中心に視察が行われた。

 まず、ザルツブルクにおける「モーツァルト」をはじめとする音楽関連の素材は、同市を「音楽都市」と位置付ける非常に重要なテーマ。市内ではモーツァルトの「生家」と「住居」が公開され、それぞれでモーツァルトが実際に使ったヴァイオリンやチェンバロ、肖像画などが見られる。「生家」の方ではオペラの舞台セットなどを入れ替えで展示し、リピーターも楽しめる工夫がなされていたほか、「住居」の庭にはウィーンから「魔笛」を作曲した小屋が移築されている。

モーツァルトの「生家」にある一家の肖像画

 また、ザンクトペーター修道院のレストランでは「モーツァルトディナー」を開催。これは食事とともにモーツァルトの名曲を楽しむもので、18世紀の衣装を纏った演奏家たちが「魔笛」「フィガロの結婚」など、有名なアリアをパフォーマンス豊かに演奏する。

 このほかザルツブルク市ではモーツァルトの曲を専門に演奏する楽団「カメラータ・ザルツブルク」が定期的に公演を行っているほか、1月末には「モーツァルト週間」として音楽祭が行われている。軽く音楽を体験したいという層から、しっかりと音楽鑑賞を楽しみたい層まで、選択肢は豊富だ。客層の趣向に合わせて組み込んでみたい。