長野県に修学旅行誘致へ、近畿圏の中学校教諭ら招く
長野県学習旅行誘致推進協議会は、県内への修学旅行を誘致しようと近畿圏の中学校教諭を招き現地研修を実施した。長野県への中学校の学習旅行は、地理的に近い関東圏が7割を超え、近畿圏からは2割弱にとどまる。反面、修学旅行に関しては近畿圏が全体の4割を占め、長野県にとって重要な市場だ。今回の現地研修には、大阪や兵庫の修旅担当の中学校教諭らが参加。県内各地で地域の特色を生かし進められているSDGs学習プログラムなどを体験、視察した。
SDGsテーマに県内縦断
研修では、大阪や京都から北陸線の特急サンダーバード、北陸新幹線を乗り継いで新潟県糸魚川まで移動し、貸切バスで長野県に向かった。これは従来、近畿圏からの修学旅行先として人気だった白馬など北アルプス山麓エリアが、貸切バスの運賃・料金高騰の影響を受けたことに伴う提案。ただ、北陸新幹線などでは集約列車の運行本数が少なく、今後JR西日本に増便を働きかけ、近畿圏からの新ルートとして確立させたい方針だ。
糸魚川から白馬エリアは1時間弱。教育旅行の受け入れに積極的な白馬アルプスホテルがある小谷村では、初夏でも雪と触れ合える栂池自然園など自然体験を売り出す。白馬村では企業研修に使われることも多い白馬EXアドベンチャーを視察。頭脳アスレチックと呼ばれる参加者同士のチームワークが試されるアクティビティのさわりを体験し教師らに好評だった。白馬八方尾根SDGs学習プログラムでは、ゴンドラとリフトを乗り継ぎ標高約1700㍍の黒菱平へ。蛇紋岩という八方尾根の特異な地質が低標高で高山植物の生息が可能であることなどのガイドを受けた。また早朝には、長野オリンピックで日本代表が活躍した白馬ジャンプ競技場近くで熱気球の搭乗体験も。白馬三山の美しい眺望に歓声が上がった。

白馬ジャンプ競技場をバックにふわりと浮く熱気球
大町市では、サントリー天然水北アルプス信濃の森工場へ。全国4カ所にあるサントリーの天然水工場の中でもっとも硬度が低い軟水を製造しており、約90分の工場見学では北アルプスに降った雨が飲料水になるまでの過程、地球上の水資源に限りがあることなどを詳しく学べる。大町市では水道水の100%を湧水から取水していることから、水をテーマに「水の学校」と称してSDGs探究学習プログラムも設定する。安曇野市でも北アルプスを水源とする清涼な水を生かした大王わさび農場を見学した。
諏訪市のエプソンミュージアム諏訪では、時計やプリンターといった同社製造の機器についての歴史はもちろん、コピー用紙の再生など資源の循環について学べる。見学の所要時間は1時間半から2時間。約10人をひとグループにして職員が案内する。下諏訪町の儀象堂では時計づくりを体験。置時計の組み立ては所要約45分で、文字盤を自由に飾り付けられるのが楽しい。諏訪湖では「スワイチ」と称してサイクリングロードが昨年4月に開通、従来のカヤックなどに加えてサイクリングも加わった。

儀象堂での置時計づくり
修学旅行の宿泊拠点でもある茅野市の白樺湖では、湖上に浮かぶ鳥居や地下200㍍から湧き上がる天然水など、知られざる白樺湖のスポットをガイドの案内で巡るカヌーツアーを体験。初心者も漕ぎ方から教えてもらえて安心して参加できる。白樺湖ではE―BIKEなどの体験も。茅野市の伝統産業の棒寒天づくりを老舗イリセンで学ぶ。先人が工夫を重ねて65年間使われてきたドラム式の天草洗い機など、昔ながらの製法でつくる寒天は見学後、ところてんで試食できる。おぎのや諏訪店では名物の峠の釜めしをはじめアレルギー対応なども細かに行っており、教育旅行での利用をアピールしている。

白樺湖のカヌー体験
南信州の飯島町は、大相撲の土俵の俵づくりも手掛けているなど近年藁細工が盛ん。町のブランド化にもつなげようと取り組んでおり、稲藁をねじってしめ縄を作った。
松川町の奥村農園は、リンゴをメーンにフルーツ狩りが楽しめる。コロナ禍から地元の学校の子どもたちを受け入れ始め、環境に優しい農園ガイドウォークも行う。見学した日は、ちょうどフルーツ狩りの端境期だったが、プラム(すもも)の「貴陽」を特別に試食させてもらった。参加した教諭の一人は「こんなに甘いプラムは初めて」と絶賛していた。

奥村農園のガイドウォーク



