豪州、29年68万人への道筋と現在地(2)-各州・地域の現状認識と今後の展開

  • 2025年6月3日

ノーザンテリトリー政府観光局

荻原真一氏(日本事務所トラベルトレードマージャー)

 ノーザンテリトリーは日本人訪問者数が23年の4300人から24年は1万2000人へと約3倍増。FITをターゲットに大手旅行会社やアクティビティOTAとタイアップしたことが奏功したといい、特にアクティビティOTAは若年層を中心に「著しく好調」に推移。例えばベルトラとのタイアップではAAT Kingsとの協力でキングスキャニオンで日本語ツアーが設定され反響があったという。

 また、6月までの現年度ではコンバージョン(訪問者数の増加)に加えて認知度向上にも力を入れ、渋谷スクランブル交差点などでの屋外広告や交通広告を実施。またSEMやFacebook、Instagramなどの広告も展開し、例えばFacebookではフォロワーが約1万5000人から約2万人へと増えInstagramもハネムーナー向けの広告などが期待を上回る成果を残した。

 来期はよりコンバージョンを重視し訪問者増をめざすことになる見込み。一方、認知度向上ではウルルよりもアリススプリングスやダーウィンにより焦点を当てていく方針で、例えばアリススプリングスでは充実したアクティビティがそろう点などをセミナーなどで発信していく。

南オーストラリア州政府観光局

エマ・テリー氏(本局CEO)
マーティン・ケーズラー氏(グローバルマーケット担当マネージャー)

 南オーストラリアでは、24年の日本人訪問者数が1万人となって前年から76%も増加。フード&ワインや自然といった魅力が日本市場に合致し、短い滞在日数でもアデレードから近い範囲でコンパクトに満喫できるのが強み。また同州創業で日本でも人気のオーガニックスキンケアブランド「ジュリーク」のファームツアーも人気で、今回のATEでも初出展したとのこと。

 州政府観光局として日本での活動はしばらく途絶えているが、4月には大阪・関西万博に合わせて州政府観光大臣とテリー氏らが来日。旅行会社などと会談しており、「日本市場重視の姿勢をご覧いただけたはず」「今回の訪日をきっかけに今後も日本の旅行業界と関係を維持、強化していきたい」という。

 また州として日本からの直行便獲得も目標としており日本滞在中にはNH、JLとも会談。「野心的」な目標ではあるが現地発の訪日需要は旺盛で教育旅行需要も多く、2027年ラグビーワールドカップでのチャーターなど様々な可能性を模索していく。

 現在は訪日で得られた情報や感触をもとに予算配分や活動計画を立てている段階だが、FITをコアターゲットとし、「旅行業界との協力関係を通して南オーストラリア州の認知や理解を向上し商品造成につなげていきたい」考え。教育旅行にもチャンスを見出す。日本事務所の開設についても「今は時期尚早だが間違いなく選択肢」とし、「直行便獲得や需要喚起を考えると今後数年間の重要な検討事項」と明言した。

タスマニア州政府観光局

サラ・クラーク氏(CEO/写真左)
リンデーン・クリアリー氏(CMO)

 タスマニア州への24年日本人訪問者数は約5100人。コロナ前は8000人台で、日本市場へのアプローチは“維持、安定”が基本姿勢だったが、今回は「増えなくていいと考えていたわけではない」「数が少ないからこそポテンシャルもある」との回答。予算の制限から口コミやTAなどとの連携に頼る部分は大きいが、取り組みの強化にも意欲的だ。

 先行事例として、シンガポールでは旅行会社とのタイアップなどが奏功し市場が拡大。冬を感じられる旅行先の人気が高いことに加えてタスマニア産のワインや食材への評価も関心につながっており、日本でも可能性次第で同様に取り組んでいきたいという。

 現在の活動で重視しているのがアグリツーリズム。もともとタスマニア島は50%以上が世界遺産を含む国立公園や保護区域で、世界でも最もきれいな空気が残る土地のひとつであるなど豊かな自然が売りで、そこで生み出されるフード&ワインやウイスキーも人気だが、そうした1次産業との触れ合いに光を当てる。世界のベストレストラン50に昨年選ばれたThe Tasmanなど評価の高いレストランも武器となる。

 このほかインフラ面ではホバート空港の滑走路改修工事が年内に完了予定で、完成後はワイドボディ機の就航が可能に。2年以内にアジアからの直行便就航もめざしている。さらに州内のホテルも充実し、ホバートだけでこの数年に7軒1300室が増加。このほか新スタジアムの建設案も出てきているという。

(前編-TA日本・韓国地区局長 デレック・ベインズ氏インタビューはこちら

※訂正案内(編集部 2025年6月4日09時45分)
タスマニア州政府観光局CEOのサラ・クラーク氏について、当初別の方のお名前を掲載しておりました。お詫びして訂正いたします。