豪州、29年68万人への道筋と現在地(2)-各州・地域の現状認識と今後の展開
ニュー・サウス・ウェールズ州政府観光局
カレン・ジョーンズ氏(本局CEO代理)
新堀治彦氏(日本局長)
ニュー・サウス・ウェールズ州は昨年、現在は約530億豪ドルの観光消費額を2035年までに910億豪ドル(約8兆4000億円)とする「非常に野心的な目標」を発表。試算ではホテル客室が4万室追加で必要(総客室数は現在の1.4倍に)であるほか航空座席も大幅に増加する必要があるが、そのなかで現在は年間で2000便弱が飛んでいる日本路線も「当然ターゲットになる」。
24年の日本人訪問者数は25%増の15万1800人で19年比は25%減。7月からの次年度では2019年水準への回復を目標とし、旅行会社やOTAとタイアップしながら冬の季節運航となるQFの新千歳/シドニー線も有効活用し数字を積み上げる。また、4月末には消費者向け日本語版サイトを新たに稼働。更新頻度高く現地発で情報を発信しつつ、日本市場向けの情報も日本事務所から並行して提供していく。
また現地では大規模な再開発が続き、ニューカッスル空港の国際線ターミナルが年内に開業予定で来年には西シドニー空港も開港。後者への就航が決まっている国際線は現在シンガポール航空のみだが「全日空、日本航空にも働きかけたい」とのこと。既存空港からの移転ではなく純増を期待し、同地域がオーストラリアで4番目の経済圏であることやブルー・マウンテンズ国立公園への距離の近さなどをアピールし、“シドニー+α”を打ち出していく。
このほかパワーハウス・ミュージアムの新施設パワーハウス・パラマタが開業間近で、年間600万人の訪問を見込む新シドニー・フィッシュマーケットも年内に完成予定。ホテルもウォルドーフ・アストリアやEVEホテルなどが新たに開業済みまたは開業を予定している。
ビクトリア州政府観光局
高森健司氏(日本・韓国局長)
ビクトリア州は24年の日本人訪問者数が7万8200人となり19年比85%まで回復。消費額はコロナ前を超えた。訪問者全体のうち75%はレジャー市場(休暇+VFR)で、ビジネスと留学は足踏みしているものの「レジャーは順調に回復している」。また他州とのシェアも重視しており、24年の約22%からの拡大をめざす。人数については2029年までに年平均8.8%増、約12万5000人に達する見込みも持つ。
課題は需要の通年化で「メルボルンを年中楽しめる場所であること」を伝えていく。5月頃には紅葉、冬には温泉やウィンターマーケットなど季節ごとの魅力を打ち出す考え。また、冬には日本の夏休みに当たることから教育旅行に注力するなどレジャー以外の需要も獲得して安定的な集客を進め、現在は下期週3便の日本航空(JL)のメルボルン線について週6便の通年化をめざす。一方アジア系航空会社との地方市場開拓も進める。
また、メディア露出も強化。直近でもテレビ東京のドラマ「ソロ活女子のススメ」が2回放送されクラブツーリズムのロケ地ツアーも増設されるなど好評だが、ダンス&ボーカルグループDa-iCEのメンバー2名もYouTubeの旅番組でメルボルンを訪れ再生回数を伸ばしている。今後もインフルエンサーを活用した露出増を進める。
加えてグレートオーシャンロードやフィリップ島など地方への需要分散にも注力。例えばベルトラと特設ページを立ち上げ地方のアクティビティを紹介し、MICE分野でも地方での宿泊を条件としたインセンティブを用意している。
西オーストラリア州政府観光局
吉澤英樹氏(日本局長)
西オーストラリアへの24年の日本人訪問者数は3万人で前年からは微増、19年比は30%減。次年度は全日空(NH)による直行便週5便のデイリー化を来年には実現することを目標とし、レジャー市場に「より真剣にフォーカス」して取り組み、すでに19年を超えた教育旅行や今後可能性があると見るMICEの市場にも目を配りながら需要の獲得に努めていく。
6月には、日本旅行業協会(JATA)のアウトバウンド促進協議会(JOTC)と閑散期対策を目的に研修旅行を予定。旅行会社とはワイルドフラワーを例年通り取り組むほかエイチ・アイ・エス(HIS)の旗艦店トラベルワンダーランド新宿では2ヶ月間の店舗ジャックも実施。地方では引き続きシンガポール航空などアジア系航空会社と連携して取り組む。また、ロットネスト島の予約経路でベルトラが世界top5に入るなど消費者行動の変化に対し、状況を注視しながら施策を展開していく。
このほか6月末にはことりっぷのパース/西オーストラリア版が改訂され発売。また次年度にはTWAとしてのグローバルブランドキャンペーン「WALKING ON A DREAM-さぁ、夢の世界へ旅立とう」の第2弾も予定する。
さらに8月か9月をめどに大阪・関西万博オーストラリア館で州独自の観光イベントを開催。TAもすでに一度開催済みでさらに会期中にもう2回予定していることから効果を最大化できるよう内容を検討中だ。また10月にも日豪経済会議のパース開催が決まっており、経済界の参加者200名ほどが訪豪予定だ。