豪州、29年68万人への道筋と現在地(2)-各州・地域の現状認識と今後の展開
オーストラリア政府観光局(TA)が4月28日から5月2日にかけてブリスベンで開催した旅行商談会「ATE25」。会場で開かれたメディア説明会ではTAが市場の現況や今後の活動計画などについて発表。日本市場についても2029年に68万人とする目標値が示された。2024年比で1.7倍、2019年比でも1.4倍と野心的な目標の達成に向けて、TAと各州・地域の観光局に現状と方針を聞いた。TA日本・韓国地区局長のデレック・ベインズ氏のインタビューに続く後編は、各州・地域の情報をまとめて紹介する。
クイーンズランド州政府観光局(TEQ)
田村充恵氏(マーケティング・エグゼクティブ)
ジェイソン・ルーカス氏(インターナショナル・ディレクター)
小林芳美氏(インターナショナル・マーケティング・マネージャー)
坂本サム氏(セールス&マーケティング・マネジャー-アジア&教育)
クイーンズランド州
クイーンズランド州全体では、2024年の日本人訪問者数は17万6000人となって19年比20%減程度。ヴァージン・オーストラリア(VA)のケアンズ線撤退は痛手だが「全体的には良い方向に向かっている」。
州としては航空路線の維持・誘致を目的とした予算で引き続きブリスベン、ゴールドコースト、ケアンズ各路線の利用を促進。地域別では、ゴールドコーストは旅行会社とのタイアップに加え認知度やイメージなどについての定量調査も実施し、その結果を活用し認知度向上や情報発信にさらに力を入れる。ケアンズは成田と関空の路線向けの予算を使い旅行会社との協業を中心に活動する。
ハミルトン島ではインフルエンサーも活用。このほか規模は小さくなるもののゴールドコーストの内陸部にあるワイン産地に光を当てるワインツーリズムも促進する。生産量は少ないが質の高いワインを生み出し日本市場にも興味を持ってくれているという。なお、ATEではTEQ本局が新キャンペーンを発表しており、これも日本市場での展開が見込まれる。
ゴールドコースト
ゴールドコーストにとって日本は「良好な関係が長く続く非常に重要な市場」。レジャー、教育旅行、MICEいずれも堅調に回復しtop5の市場にも入り「今後も変わらず非常にポジティブに見ている」という。
現地最新情報として、ゴールドコースト南部のバーレイヘッズで6月に新ラグジュアリーホテル「モンドリアン」が開業予定。ライトレールも南側への延伸工事が来年早期に完成予定のため新たなエリアでの新たな経験を打ち出せるようになる。ラグジュアリーホテルはモンドリアン含め複数開業していることからハイエンドの顧客層の開拓もめざす。
また体験も各地で新プロダクトの開発が進み、カランビン・ワイルドライフ・サンクチュアリーでは夜のライトアップショー「Astra Lumina」が誕生した。
一時課題となっていたブリスベン空港からのアクセスでは、シャトルコーチ「JAPANESE EXPRESS BUS」をカンタス航空(QF)とジェットスター航空(JQ)の日本路線スケジュールに合わせて運行。専用カウンターを設置して日本語を話すスタッフが応対している。
なお、今年はサイクロンによってビーチの砂が削り取られるなど影響を受けたが、復旧作業が急ピッチで進み「現在は多くのビーチが作業を完了して利用可能となり水質も問題ない」状態に。完全な復旧も数ヶ月以内に終えられるという。
ケアンズ
ケアンズへの訪問者数は今年はVA撤退の影響が予想されるが、24年は19年比4%減まで回復した。この要因は「地元企業とのチーム力」で、コロナ渦中から各企業が積極的にメディアや旅行会社にオンラインでアプローチをかけコロナ後も働きかけを継続。
特に2つの世界遺産に加えて「常夏、時差1時間、一番近いオーストラリア」の3点をTEQを含め関係者の共通メッセージとして数年かけて発信し続けたことは成果につながったとの分析。今後も「Palm Cove」を「パームコーヴ」ではなく「パームコーブ」と表記するなど言葉の統一によるメッセージの明確化を続ける。
流通では、少しずつチャネルが複雑になるなかチームケアンズとしてどう対応するか模索。直販利用のFIT層に対しサプライヤーがソーシャルメディアなどでどうリーチすべきかなどについて関係者で協議を重ねている。また航空座席の増加に向け、まずは既存便をしっかり埋めつつ空港やTEQとアプローチしていく。関空からのオーストラリア路線がケアンズのみだったところからシドニーにも開設されて需要分散を懸念したものの、それほど影響はなかったという。