あなたもホテルオーナーに!宿泊業の始め⽅-MATCH 松宮英範氏
具体的には、18年6⽉旅館業法が改正され、アパートの1室でも、無⼈でも、ホテルとして365⽇営業できるようになりました。もちろん諸条件はありますが、従前は旅館は客室5部屋以上、ホテルは10部屋以上ないと営業できませんでした。フロントも必要なくなり、出⼊りと鍵の管理をWEB上ですることで、現地は無⼈運営が可能となり、コスト上の問題も⼤きく改善されました。1948年に出来た、それはそれは古い法律が今の時代にようやく適応されてきたのです。
同時に、⺠泊の法律もできます。既存の宿泊事業者を守るため、営業⽇数が180⽇に限定されてはいますが、それまで不可能だった住宅地でも営業が出来たり、家主居住型といって⾃分の家の1部屋を貸すタイプなら消防設備などの設置も免除されました。かくいう私も、最初は⾃分の家の1室を⺠泊として貸すことからこの業界に⾜を踏み⼊れています。
そして翌19年6⽉、今度は建築基準法が改正されます。200平⽶以内の⼩規模な住宅は、住宅から宿泊施設への⽤途変更⼿続きが不要となり、⽇本に多い3階建の建物も宿泊施設に転⽤しやすくなりました。⽇本には800万⼾の空き家があると⾔われて問題になっていますが、⼀軒家の宿泊施設として⽣まれ変わる⼟壌ができました。銀⾏も融資をしてくれる専⽤のローン商品があり、⼿持ちの資⾦に余裕がなくても宿泊業をスタート出来る環境となったのです。
さらに、昨年23年12⽉、これまでNGだった旅館ホテル営業のライセンス譲渡が可能となり、事業承継問題にも光が当たっています。後継者がいない施設をライセンス毎、引き受けることができ、これまではM&Aでしか実現しなかったホテル、旅館、⺠宿を、会社は譲渡せず宿泊だけを切り離し継承できるようにアップデートされています。
とまぁ、怒涛の3連発で⼩規模な宿泊事業者へのチャンスが拡⼤しています。
私の周りにも、ホテルオーナーが次々⽣まれています。もちろん私も応援し、サポートしています。コロナ禍の事業再構築補助⾦制度で思い切った補助⾦が出たことも後押しとなり、旅⾏会社の皆様も、⼤⼿から中⼩まで続々と宿泊業にチャレンジされています。
旅⾏会社勤務のサラリーマン時代、ホテルが取れなくて散々⾟い⽬にあった⾝としては、サプライヤーとして⾃ら持ち得る爽快さと、旅⾏会社時代の経験が全て役にたつ巡り合わせの良さに安穏な毎⽇を過ごしています。ツアーを造成する際、何処に泊まるか最終⽇程表でしか判明しない「ホテルリスト内」がどうにも嫌いで、眺めのいい部屋や城壁内、旧市街内など「ホテル指定」に強いこだわりを持ってきたので、宿泊する⽴地やクラス次第で全く違った旅になることを、今は思う存分発信し続けています。
では、どんなホテルをどんな思いで私は作っているのか?
当初から⼀貫して私が世に送り出しているホテルの基本はコンドミニアムという形態。部屋が広く、家族みんなで宿泊できて、キッチンやダイニング、洗濯機が完備され、⻑期滞在に快適なもの。これは、集客の話とあわせて次回に続きます。
株式会社MATCH代表。大学卒業後、大手旅行会社で26年勤務。主に富裕層向けの海外ツアーを手掛ける。50歳を機に、コロナ禍の2021年に独立起業し、ニッチなホテルのプロデュースと集客支援を行う。インバウンド向けのミニホテルや長期滞在型のコンドミニアムホテル、関東近郊のリゾート地で展開する一棟貸切タイプのラグジュアリーヴィラなど現在12施設の運営や集客に携わる。その他、集客にお困りの施設の宿泊コンサルタントや、神奈川県で第3種の旅行業登録、各種講演や大学の講師なども務める。大阪出身、横浜市在住。