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業界の人材不足などで議論、震災復興サポート策も-観光立国推進協議会

 観光業界を中心とした企業トップ100名からなる「観光立国推進協議会」は1月16日、第10回観光立国推進協議会を都内で開催した。今回は旅行、宿泊、交通、飲食などを中心とした企業の委員・代理人が78名参加。「観光の価値向上と持続可能な観光産業に向けて」をテーマに8つの課題を議論した。内容は今後取りまとめ、国土交通大臣に提言として提出する。

スピーカーからは能登半島地震の被災者を気遣う声が相次いだ


日観振会長の山西健一郎氏

 会議の冒頭に登壇した同協議会委員長で日本観光振興協会会長の山西健一郎氏は、昨年から国内外の旅行者が増加傾向にあることに喜びを示すとともに、3月16日の北陸新幹線の金沢・敦賀間延伸や2025年の大阪・関西万博に向け、国内外からの観光客の受入準備を加速させる必要がある旨を説明。そのためには「深刻な人手不足により現場で需要に供給が追い付かないなど多くの課題に直面している」状況を改善すべきとし、DX推進による業務の改善・効率化やSDGS対応などにより、観光産業の価値を高めることで「魅力的かつ持続可能な産業として多くの働き手に認知され、志望する学生に選ばれる産業」にするよう訴えた。

観光庁長官の髙橋一郎氏

 続いて来賓として挨拶した観光庁長官の髙橋一郎氏は、国内・訪日需要が順調に回復するなか「今年はさらなる飛躍に向けて大きく歩みを進める一年」としながらも、旅行先が一部に集中していることや、新型コロナの影響による事業者の債務、人材不足、オーバーツーリズム、海外旅行者数の伸び悩みによるアンバランスな双方向交流などの課題があることを改めて述べた。

 なかでも「人手不足は取り明け深刻」と強調し、「生産性や収益の低さという構造的課題も顕在化してきた。担い手を確保するためにも生産性・収益性を高め、希望のある産業になるよう業界の皆様と取り組みたい」と意欲を述べた。さらに地方活性化についても「各地の収益・利益が地域で還元され、地域を発展させていくための投資、人材育成の基盤づくりに繋がること重要」とした。

 協議会では事務局が議論のたたき台として、「観光地・観光産業の人手不足への取組強化」「地域における観光地域づくり体制の整備・強化」「旅行需要分散化・平準化」「環境DXへの取組強化」「観光客の地方誘客への取組強化」「双方向交流拡大への取組推進(アウトバウンド・国際相互交流の促進)」「観光による『2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)』をはじめとした大規模イベントの支援に向けた官民一体となった取組強化」「地域の安定的な財政運営に必要な財源の確保・充実」の8つの課題と取り組むべき内容を提示。会議では8つの課題に加え、能登半島地震からの復興について、各委員が指名制で意見を述べた。

JATA会長の髙橋広行氏

 日本旅行業協会(JATA)会長の髙橋広行氏は能登の観光復興について、2段階のフェーズで取り組むことを提案。第1フェーズでは金沢を含む比較的被害が軽微だった北陸4県への風評対策をおこなうとし、こうした地域について「早期にインフラが回復・再開して通常営業ができているにも関わらず、予約のキャンセルが相次ぐ実態。先々の予約がないことへの懸念の声が数多く、深刻な状況」と説明。政府や自治体の支援のもと「正確な情報発信と風評被害対策、需要喚起策の実施が不可欠」と強調した。

 そのうえで「すでにコロナ禍に構築した旅行割引や全国旅行支援のスキームがある。これを活用し『頑張れ北陸』というムーブメントを全国的に展開することで、北陸支援を具現化すべき」と語った。加えて3月16日に控える北陸新幹線の金沢・敦賀間延伸を「観光の回復拡大をはかる絶好の機会」と期待を示した。

 第2フェーズは地震の被害が深刻だった地域に対する観光復興を指す。髙橋氏は「元に戻す復旧の発想でなく能登を軸として北陸地域をカバーする、新時代にふさわしい創造的な観光復興」が必要とし、北陸の観光地を面でつなぎ、レジリエンスや観光DX、SDGsなどを取り入れた「北陸観光スマートゾーン構想」を提案。「旅行者の利便性を向上させ、旅行会社の生産性改善につながるような復興を実現すべき」と訴えるとともに「ツーリズム先進的なモデルケースになるような取り組みで、地方誘客・活性化、オーバーツーリズムの解消につなげられるのでは」と期待を語った。

 さらに髙橋氏は海外旅行について、一番の課題としてパスポートの所持率が17%と先進国の中でも低いことを指摘。パスポートの所持率向上に向け、国際観光旅客税を活用した取得支援策などを実施することを強く要望した。

東京商工会議所副会頭の田川博己氏

 東京商工会議所副会頭(トラベル&ツーリズム委員会委員長)の田川博己氏は「復旧の後、復興にどうツーリズム産業が関わるか、タイムスケジュールを持ってメンバーが一致団結して進めることを確認したい」と強調。「被害が軽微だった場所の風評被害対策として、マスコミを含めつつどう対策を練るかが重要」と話し、政府を含め関係団体全員で取り組むべき事案であると訴えた。

 加えて同氏はツーリズム産業の「産業」としてのプレゼンスの向上をはかるとともに、日本が「文化がある国といてブランド化していない」ことも課題として指摘。東京の文化都市化を提案するとともに「日本のブランド力をあげるための人材育成などの作業を大阪・関西万博に向けてするべき」と語った。このほか、ナイトタイムエコノミーの活性化、地方誘客に向けた「広域観光」の強化などを指摘した。

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