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24年はオーストリア「ザルツカンマーグート地方」の文化に脚光、現地レポート第1弾はリンツ

  • 2023年11月8日

想像を超越する芸術世界に圧倒

 リンツ観光は中央広場(ハウプトプラッツ)から広がる旧市街での散策が中心で、トラムも便利。街中には小高い丘に建つリンツ城、新旧の大聖堂(新大聖堂はオーストリアでも最大)、モーツァルトハウスなどが徒歩で簡単にアクセス可能。ちなみにリンツ城は2009年の欧州文化首都に合わせて増築されており、リンツの街を見渡す大パノラマを堪能できるデッキも設けられている。

リンツのモーツァルトハウス。休暇で滞在したったの4日間で交響曲「リンツ」を作曲したとか
時間があれば入りたかった素敵な雑貨店やカフェ、アパレルショップもいくつも

 約24時間の今回のリンツ滞在でハイライトだったのは、ブルックナーハウスが毎年開催するナイトイベント「リンツ音の雲(Linzer Klangwolke)」と、世界レベルのデジタルアートの祭典「アルス・エレクトロニカ・フェスティバル」。

「リンツ音の雲」の様子

 前者はドナウ川を舞台に音や光、映像、ダンス、サーカスなどを組み合わせる大興奮の屋外マルチメディア音楽イベント。大型LEDビジョンを搭載して火も吹く複数のフロートが川を左右に行き来し、クラシックからポップ、ダンスミュージックと幅広いジャンルの音楽が奏でられ、無数のレーザーライトは縦横無尽に空を駆け巡り、周囲の建物も連動してライトアップされ、さらに放水銃も豪快に水を吹き出す!一夜で10万人が来場するというのも納得の大迫力で、日本での花火大会のような感覚で市民に愛されていることを感じた。VIPエリアの入場について旅行会社が交渉する余地もあるとのこと。

 一方、アルス・エレクトロニカも毎年開催されているアートイベント。五感や想像力をあの手この手で刺激する数々の摩訶不思議な作品を前にしていると、デジタルアートやモダンアートに馴染みのない人間でも自ずとメッセージを感じもし、むしろこれこそあるべきアートの受け取り方かとも思ったり。日本からも複数のアーティストや団体が参加していて、会場内でも街中でも日本語が少なからず聞こえた。ちなみに、リンツは2014年には「ユネスコ・メディアアート都市」にも選ばれている。

 両イベントに共通して感じたのはハプスブルク家や神聖ローマ帝国といった重厚な歴史のイメージとはかけ離れた前衛性、革新性で、例えば音の雲のつかみの「爆音」はこれまで行ったことのあるどのライブよりも「爆音」。ロック好きの自分でも度肝を抜かれた。実はそうしたアバンギャルドな側面もリンツやオーストリアの人々の特徴だそう。

 また、リンツを語るうえで外せない存在が名作曲家アントン・ブルックナーで、毎年開催されるインターナショナル・ブルックナー・フェスティバルも人気。2024年はブルックナーの生誕200年にあたることから、「ブルックナー・イヤー」として様々な記念イベントや公演が予定されているほか、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の来年のニューイヤー・コンサートでもブルックナー作品の演奏が予定されている。

街なかには市のプロジェクトで世界のアーティストが描いたストリートアートも

 ちなみにリンツ観光局が8月末に公開したプロモーション動画もなかなかにアバンギャルド。1ヶ月ちょっとで21万回も再生されているので興味があればご覧あれ。

 第2弾は、2024年の欧州文化首都の舞台となるバート・イッシュルをご紹介。近日公開予定です。

取材協力:オーバーエステライヒ州観光局、オーストリア政府観光局