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24年はオーストリア「ザルツカンマーグート地方」の文化に脚光、現地レポート第1弾はリンツ

  • 2023年11月8日

 オーストリアのバート・イッシュルとその周辺のザルツカンマーグート地方では、「欧州文化首都」となる2024年に向けた準備が精力的に進められている。地名も欧州文化首都もよく知らない?大丈夫、そんな人にこそこのレポートを読んでもらえれば地域の魅力やこれから起きることが分かるはず。是非参考にしてみてほしい。

2009年に欧州文化首都に選ばれその後の発展に繋げたリンツ

欧州文化首都ってなんだ?

 トラベルビジョンの読者諸氏のなかで「欧州文化首都」、または「欧州文化都市」という単語の認知度はどの程度だろう。多くて3割くらい、ましてそれを理由に旅行した、または企画・販売した経験のある割合となったら1割にも満たないのではないか。それに、トラベルビジョンが取り上げた記事の数も22年強でたった21本。少ない!

 欧州文化首都とは「European Capitals of Culture」の訳で、2005年に欧州文化都市(European Cities of Culture)から名称が変わった。欧州連合(の前身の欧州共同体)が、加盟各国の相互理解促進と融和統合を進めるため1985年から毎年実施している事業で、選ばれた都市(最近は年2、3都市)では文化や芸術などを軸に、年間を通して様々なイベントや企画を実施。合わせてインフラ整備なども進むため、莫大な経済効果が得られるらしい。

 では、それについて今トラベルビジョンがレポートを書く理由は?それは、2024年の欧州文化首都のひとつに選ばれたオーストリア、ザルツカンマーグート地方のバート・イッシュルと、2009年にその舞台となったリンツの両都市を視察する機会に恵まれたから。結論からいえば、欧州文化首都のみを理由に現地を訪れる日本人はそれほど多くないとしても、いずれの地域・街も日本市場におすすめしたいポイントやチャンスが盛りだくさんだ。

ドナウ河畔の文化・工業都市、リンツ

ドナウ川沿いに位置しているので船での移動も選択肢で、滞在中も実際に多くのリバークルーズ船を見ることができた

 最初に訪れたのはオーストリア第3の都市リンツで、リンツといえばスイスのチョコレート(Lindt)が有名だがこちらのつづりはLinz。オーストリア最大の工業都市として知られる。オーバーエステライヒ州の州都でもあり、ウィーン中央駅から鉄道で西へ1時間15分ほど。ザルツブルクからも約1時間で到着可能だ。

 オーバーエステライヒ州観光局によると、2009年の欧州文化首都では期間中のイベントだけで参加者数が約340万人に上って通年の宿泊数も9.5%増加したほか、リンツ市内のミュージアムはすべて来館者数が過去最多を更新するなど数々の記録を残した。そしてリンツ観光局CEOのマリー=ルイーゼ・シュヌアプファイル氏も、選定が同地にとって「間違いなくターニングポイントだった」とし、その過程で定めた「工業、文化、自然」の3本柱が現在も観光戦略の根幹となっていると説明した。当時の意識調査では、リンツが「魅力的な文化体験を備える、現代的でダイナミックな産業とテクノロジーの都市」であるとのポジティブなイメージを新たに獲得できたことも確認できたという。

 ちなみに3本柱のうち工業は、第二次世界大戦中にヒトラーによって鉄鋼業の工場が設けられたことが始まりで、現在でも多くを雇用するなど地域だけでなくオーストリア全体の経済の重要な基盤となっている。以前は公害が酷かったらしいものの、現在では厳しい環境対策が進められていて空気に違和感などを感じる機会はなし。むしろモクモクと白い煙が煙突から立ち上る様子は、見ているとむしろなんだか元気が湧いてくるような気分にも。

今回は見る機会がなかったが、もしかしたら工場夜景も楽しめるかも?

 なお、近現代史との関わりでは、第二次世界大戦後に東西陣営の境界になっていた時期もあるそうだ。