観光を一流の産業へ-星野佳路氏、コロナ後の今こそ「最大のチャンス」

  • 2023年4月26日

 星野リゾート代表取締役社長の星野佳路氏はこのほどオンライン開催したプレス発表会でコロナ後の見通しや同社の戦略について説明し、地方分散やオーバーツーリズム対策、従事者の雇用条件改善による産業としての地位向上などコロナ禍以前からの重要課題について抜本的に取り組めるチャンスであるとして積極的な取り組みに意欲を示した。

 今後の見通しについて星野氏は、2019年に4.8兆円規模だったところから皆無となっていた訪日需要が戻ってくる一方、本来は海外旅行に行きたいが行けず代わりに国内の観光地を訪れていた層が徐々に失われていくと予想。この海外旅行の代替需要は「私達にとって非常に大きなインパクトがあった」という。

 訪日については、順調な回復を実感しているところ。ただしコロナ前にはアジアからの比率が高すぎたとの反省のもと、これまで以上に欧米からの需要獲得に力を入れている。星野氏は、日本の観光産業関係者がこぞって2019年への回帰を目指しているのに対し、「2019年がパーフェクトだったわけではない」と釘を差した。

 特に地方分散については、コロナ前にはインバウンド訪問先の都道府県のトップ10だけで全体の80%を占め30の県は観光の恩恵を受けていない状況だったとし、「(日本にとって)得意の文化観光に加えて不得意の自然観光を強化」することが観光立国の実現のためにも必要だと訴えた。

 また今後取り組むポイントとして示された一つが「ステークホルダーツーリズム」。観光の人気上昇に伴って地域住民(=ステークホルダー)がしわ寄せを余儀なくされるオーバーツーリズムの状況が世界各国で発生するなかで、地方分散、環境対策も含めて「2019年の観光に戻るのでなく新たな観光のあり方を模索する」ことが重要と主張。2019年に戻ることに固執すると日本の観光が取り残されると危機感を示した。

 星野リゾートとしては、観光による二酸化炭素排出量のうち交通が大きな割合を占めるなかで、連泊の強化に取り組む。かねてからアクティビティの強化などを進めてきたものの、西表島ホテルではこの4月から連泊の予約のみ受け付けるように決定。2019年度には1泊での利用の割合が51.3%を占め、以前からの施策の成果で2022年度には29.6%にまで低下したものの、2023年度はそれをゼロとしようとする試み。

 星野氏は「連泊の方が満足度高いという調査結果もある」とし、「短期的には色々なハレーションがあるかもしれないが長期的には日本の観光を変える」と強調。ゆくゆくは全国で展開していきたいと考えを語った。このほか電気自動車(EV)への対応も強化。現在は23施設まで導入済みで今後も全施設への配備を目標に掲げる。

 さらに星野氏は、より根本的な課題として従業員の労働環境について「観光産業の一番の問題」であるとし、「一流の産業」として認められ「ステータスの高い仕事」だと認識されるよう改善に注力する考えを示した。星野リゾートはコロナ禍でも施設数の拡大に伴って従業員の数も増加してきているものの、今後重要性が増す地方での採用強化も踏まえて雇用条件の改善が必要との考え。

星野氏は、観光産業がこれまでひとまずは人材を集められていたことに「甘えてきた」としつつ、コロナ禍を経た現在の人手不足は状況改善のために「歴史的に最大のチャンス」であると強調。「長年のテーマだったがそろそろ本気で解決しなければいけない時期に来ている」とし、「観光立国として地方の経済に貢献するためには他産業に劣っている状態をなくしていかなければならない。その先頭を切っていきたい」と語った。

 具体的には年間休日数や給与を引き上げていく方針で、星野リゾートとしても年間の休日を115日とし、さらに2024年度入社から初任給を11.7%引き上げて24万円とすることを決めている。また地方分散と同様に時期の分散も雇用の安定、増加に繋がることから引き続き取り組んでいく。