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ChatGPTの機能を搭載したExpediaのアプリを使ってみた-RT Collection 柴田真人氏

  • 2023年4月17日

 第28回目のコラムは「ChatGPTの機能を搭載したExpediaのアプリを使ってみた」について書いていきます。

 3月後半から桜シーズンに突入し、インバウンドのピーク時期を迎え、とにかく忙殺された1か月間でした。海外からたくさんの旅行者が日本を訪れてくれるのはうれしい反面、空港内の入国審査や税関審査、そして観光事業者ではスタッフ数が足りていないことが明らかでした。海外から到着した旅行者が入国審査等を終えて到着ゲートに出てくるまでにかかる時間は2時間から3時間、その影響で空港でのドライバーの待機時間が予想以上に長くなり、さらに空港でのミートアシストのスタッフやガイドの決定も前日や当日直前になるなど、ギリギリのところで踏ん張っている毎日でした。都内のアクティビティの事業者では翌月のガイドが100人以上足りないという話も聞いたほどです。

 都内にいると訪日外国人観光客の団体ツアーも目にするようになりました。銀座の大通りには大型バスが頻繁に停まり、東南アジアや欧米のツアー客がバスから降り、ショッピングを楽しんでいます。先日まで銀座にある1泊1室15,000円ほどだったホテルの客室が3月末には45,000円ほどに値上がりして、価格が3倍前後に跳ね上がっていました。この値上げでも訪日外国人観光客が日本に来ることを考えると、改めてインバウンドの勢いを感じます。3月の訪日外国人観光客数の速報値の発表が気になりますが、ツアーオペレーターによっては7月の到着分まで受注をストップするところが出てきており、受けきれない状況は続いています。

 さて、本題に入ります。

 年明けに執筆したコラムで取り上げたChatGPTですが、今もなお話題が続いていて動向が注目されています。最近では学校の作文や論文にChatGPTが使われるのではないかというニュースも見るほどです。この数カ月の間でもその進化するスピードはとてつもなく速く、情報をアップデートするだけでも大変です。先日、ChatGPTはサードパーティーとの連携を可能にするプラグインに対応し、旅行系でいうとExpediaがプラグインを開発して導入しました。現在、ChatGPTのプラグインはアルファ版で利用者を限定していますが、ChatGPT旋風はまだまだ止まりません。そして、つい先日、Expediaはアプリ内にChatGPTを利用したチャット機能を搭載しました。現在はiOS版のみとなっていますが、早速使って見たので紹介します。

 iOS版のExpediaのアプリは初期設定で言語設定が日本語で表示されていますが、アプリ内の設定画面で英語に切り替えるとChatGPTを利用したチャット機能が表示されます。画像内のExplore trip ideas with ChatGPTをクリックするとチャットボックスが立ち上がります。


 英語で質問を書くことになりますが、早速質問をしてみました。まず初めに「今回はハネムーン旅行なので、プール付き水上ヴィラのあるモルディブのリゾートを5つ提案してほしい」と質問したところ、「ソネバジャニ、アナンタラヴェリモルディブリゾート、ギリランカンフシ、セントレジスモルディブヴォンムリリゾート」の5軒の提案がありました。リゾートの選定はともかく、質問に対しての回答は正しいです。そして、それぞれのリゾートについて簡単な紹介文も回答に書かれていました。次に「モルディブの6日間の滞在プランの提案をしてほしい」と質問したところ、Day 1からDay 6までのモルディブでの過ごし方の提案してくれました。モルディブで体験できるアクティビティを各日程に散りばめたような感じですが、この回答も提案としてはよいのではないでしょうか。


 ここまでは以前のChatGPTでも提案できるような内容になりますが、ExpediaのアプリではこのAIとの会話の内容が「Trip」の1つとして記憶されます。そして、会話内で出てきたリゾートをピックアップし、リストが自動生成されます。リスト内のそれぞれのリゾートのバナーからはExpedia内の販売ページにアクセスすることができ、空室状況の確認や実際に予約することもできます。また、会話の中で出てきた国や都市からAIが判断し、航空券のルートや空席状況、航空券価格の確認、さらに現地ツアーやアクティビティのリストも自動生成され、実際に予約することもできます。


 このようにChatGPTとアプリを掛け合わせることで、単純な会話のやり取りだけだったものが、商品の紹介や予約までできるようになりました。とても速いスピードで進化していることがわかります。また、会話の中ではリゾートのチェックイン、チェックアウト時間、リゾート内の施設、チャイルドポリシー、客室カテゴリー、客室サイズ、アメニティなどにもしっかりと回答しており、おそらくですがExpedia内に掲載されているリゾートのジェネラルインフォメーションや客室情報についてはAIが全て学習し、受け答えができるようになっていると思われます。


 今回実際にアプリを利用してみてできなかったことは、会話内ではホテルや航空券のリアルタイムの金額についての情報を得ることはできないということでした。そのため、AIとの会話の内容が「Trip」として記憶され、その後に表示されるリゾートや航空券のリストからExpediaの販売ページに飛んで初めて金額についての情報を得ることができます。

 このような最新のアプリを理解するには実際に利用してみるのが一番なので、皆さんも一度使ってみましょう。

柴田 真人 / Masato SHIBATA
大学生時代にオーストラリアのタスマニア島で過ごし、旅行会社に就職。15年間の旅行会社勤務時代には主に東南アジア方面の仕入れや企画に従事。また、フィリピンでの5年7ヵ月間の海外赴任を通して、アウトソーシング事業の立ち上げからインバウンド事業における現地支店の立ち上げ及び日本マーケット初のチャーター便運航のプロジェクトなどを経験。その後、2018年に合同会社 RT Collectionを設立。