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【弁護士に聞く】中小企業にも義務化、パワハラ防止措置とは何か

パワハラの類型化も

 パワハラは、先に引用した同法第30条の2によれば、

(1)職場において行われる優越的な関係を背景とした言動で
(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
(3)その雇用する労働者の就業環境が害されるもの

であり、この3要件全てを満たすものを言う。

 指針はこの定義を類型化しているが(詳細は厚労省ホームページのリーフレット参照)、従来問題とされてきたのは(2)の要件であった。日本の職場では、上司が部下の不手際を「叱責」するのは当然の「業務上必要な指導」と考えられてきたからである。しかし、時は羽をもっている。私は、大手金融会社の内部通報の受け皿業務を20年以上担当しているが、今や「叱責」というのは時代遅れの代物に感じる。日経新聞に掲載される中間管理職の部下の把握方法に関するノウハウ本の広告を読んでいても、殆どが対等の立場で部下とともに成績不振の原因を探るというミーティングが主流だ。上司が電話口で部下の長々とした弁解を聞いていて、思わず発した「お前の話を聞いていると俺は自分の感情を抑えられなくなる」などという発言は、部下を「お前」と呼んだ瞬間からNGであり、この発言は脅迫に当たるとされる時代である。


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三浦雅生 弁護士
75年司法試験合格。76年明治大学法学部卒業。78年東京弁護士会に弁護士登録。91年に社団法人日本旅行業協会(JATA)「90年代の旅行業法制を考える会」、92年に運輸省「旅行業務適正化対策研究会」、93年に運輸省「旅行業問題研究会」、02年に国土交通省「旅行業法等検討懇談会」の各委員を歴任。15年2月観光庁「OTAガイドライン策定検討委員会」委員、同年11月国土交通省・厚生労働省「「民泊サービス」のあり方に関する検討会」委員、16年1月国土交通省「軽井沢バス事故対策検討委員会」委員、同年10月観光庁「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」委員、17年6月新宿区民泊問題対策検討会議副議長、世田谷区民泊検討委員会委員長に各就任。