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【フランス現地レポート】ソフトモビリティがパリの風景を変える サイクリングブームとSDGs

  • 2022年10月7日

「15分の街パリ」とオリンピック・パラリンピックに向けた緑化計画

 「15分都市構想」は、パリ第1パンテオン・ソルボンヌ大学のカルロス・モレノ教授により提案された、車に占領された街を人々に取り戻そうとする試みである。イダルコ市長は、この構想をベースに市民が徒歩か自転車で、職場、学校、医療機関、スポーツ施設、食料品店、カフェや公園等の生活インフラに15分でアクセスできる、従来の自動車優先からソフトモビリティで日常生活が送れるヒューマン・サイズの都市への変容を目指している。

 コロナ禍によるロックダウンでリモートワークが導入され、在宅勤務が一挙に広まったことが「職住接近」の実現を後押しする。また、パリとその近郊131自治体から構成される「メトロポール・デュ・グラン・パリ(MGP)」は2021年7月、6000万ユーロ(約84億円)を投入して、パリと郊外を結ぶ全長200kmの自転車道8ルートの建設計画を発表。職場と住居が離れている人々へのサポートの一環として、首都圏高速鉄道(RER)のルート上で自転車利用が可能なようにRERの路線に沿った自転車道も整備される。オリンピック・パラリンピックの会場は市内にある既存の施設を利用する他、オリンピック村も自転車で15分程度の場所に建設中だ。

オリンピック村 ©Paris2024

 「グリーン・インフラ」の整備も進む。2024年に向けて、市内の主要な観光スポットを緑化する計画があり、エッフェル塔周辺やコンコルド広場はオリンピック・パラリンピックのタイミングに合わせて「公園」に生まれ変わる。また、2030年までにシャンゼリゼ通りも4車線から2車線となり歩行者と緑のエリアが新設され、通り沿いに空気の質を改善する「木のトンネル」が出現する予定だという。

 その一方で、30キロの速度制限、車線の減少、Quaiと呼ばれるセーヌ河畔への車両の乗り入れ禁止などのためパリ市内は慢性的な大渋滞。ドライバーのみならず市民もこれまで以上に大きなストレスを抱えているのも事実だ。

参考文献:https://www.paris.fr/

※本記事は9月27日現在の情報を基に執筆しています。

平野いづみ
1993年よりフランス・パリ在住、フリーランスの通訳コーディネーター・ジャーナリスト。旅行業界誌、女性誌への執筆、メディア・コーディネート等を中心に、近年インバウンド案件も数多く手がける。