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人と人、人と地域を結ぶインバウンド事業、復活に向けた準備を加速-ノットワールド代表取締役 佐々木文人氏

  • 2022年7月26日

サブスクサービスでガイドのスキルアップを支援
国境が開けば、訪日客は一気に戻ってくる

-地域プロデュース事業では、どのような活動をされていますか。

佐々木 旅行者目線で満足度の高い商品開発を支援しています。そのなかには、ツアーの造成もあれば、ガイドの育成もあります。最終的には、それをOTAに載せて売っていく販売支援まで行っています。また、コロナ禍では、オンラインツアーの造成と販売も始めました。

 「来た球を振る」というのが基本的な方針ですが、熱い思いを持ってちゃんといいものを作るんだという地域とご一緒させていただいています。零細企業ですので、行政案件で自分たちが先頭に立つとキャッシュフローが回らなくなる恐れがあるため、大きな企業との協業のなかで、自分たちが得意な部分を担う形をとっています。

-オンラインツアーを始められた経緯を教えてください。

佐々木 日本と海外とを繋ぐ結び目を創りたいと言っているのに、そもそも訪日旅行者が来ない。それを何とかできないか、という思いで始めました。2020年5月に、雇用調整助成金を使い、社員全員充電期間にする決断をしました。その期間、河野と作戦会議を行い、今できることとして、オンラインツアー、次に向けての準備、自治体案件の獲得との認識を共有し、6月からリソースをその3点に集中させました。

 オンラインツアーについては、先行してノウハウを身につければ自治体の支援にも活用できるのではないかと考え、力を入れました。大手と組むというよりは、現地のプレイヤーと一緒に進めました。初期の段階では、その地域で初めてのオンラインツアーとなるケースも多かったため、メディアでも取り上げてもらえました。いいタイミングだったと思います。

 しかし、インバウンド向けの事業を展開してきたので、国内の集客で苦労しました。繰り返し提供することでファンが増えてきた手応えはありますが、今でも試行錯誤中というところはあります。

-ガイドの育成や質の向上にも力を入れています。その背景をお聞かせください。

佐々木 2019年は1万8000人ほどのゲストを迎えました。ツアー開始直後の2015年1月は2人でしたので、「ここまで来たか」という気持ちはあります。一方で、2019年の訪日外国人は3000万人以上。そのなかで、私たちの顧客はまだその0.1%にも満たない。このまま続けてインバウンドにインパクトを残せるのかと思った時に、自社ツアーを造成・催行するよりも、ガイドによって全体的なゲストの満足度を上げていく方がいいのではないかと考え始めました。日本全国のガイドを育て、増やしていけば、旅行者への影響はもっと大きくなるのではないかと。

 その思いで、ガイドコミュニティの創出を始めました。2020年2月にそのキックオフイベントをしたのですが、そのタイミングでコロナ禍に入ってしまいました。思った活動ができないなかで、復活に向けた準備のために、ガイド研修、JWG Live!という無料ウェビナー、無料で下見ができるような観光施設の開拓・リスト化などを続けてきました。

-そのなかで、今年7月1日にガイドのサブスクサービスを立ち上げられました。

佐々木 コロナ禍において、会費無料で会員制度を運営していましたが、ガイドサービスの向上のためには、有料にしたうえで、ガイドに多くのメリットを還元していく方がいいのではないかと考えました。年会費制の「KNOTTER+(ノッタープラス)」と月額サブスクの「KNOTTER(ノッター)」を用意し、9月1日からの新年度に向けて会員募集をしているところです。

 これまでの研修の割引だけでなく、知識を習得するための様々な動画をストックして見放題にして、ガイドの人たちがより効率的にスキルを身につけられるサービスを提供します。観光地の知識だけでなく、コミュニケーションスキル・ビジネススキル等、活躍していく上で必要となる広範なコンテンツを用意していくことも私たちの特徴です。

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