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人と人、人と地域を結ぶインバウンド事業、復活に向けた準備を加速-ノットワールド代表取締役 佐々木文人氏

  • 2022年7月26日

サブスクサービスでガイドのスキルアップを支援
国境が開けば、訪日客は一気に戻ってくる

-ガイドコミュニティの創出の目的はどこにあるのでしょうか。

佐々木 個人が集まりネットワークとなることで力を持ち、2つのことを実現することです。1つはガイドの活躍機会、つまり仕事の創出。弊社が催行しているツアーの委託に加え、CtoCのプラットフォームでのガイド機会の創出や、今後は、旅行会社もこのコミュニティに加わってもらい、旅行会社とガイドとのマッチングも行っていきたいと考えています。ガイドは個人事業主で、10社に登録していたら、それぞれ別々の連絡方法で仕事を受注しています。それでは、ガイド個人のリアルタイムの予定品質が見えませんし、いいガイド参加がすぐ分からず、マッチングも非効率です。それをコミュニティで束ねて、スケジュールの一括化や品質の見える化をすれば、効率的な機会の創出につなげることができます。

 また、ガイドの仕事の課題は繁閑差が大きいことです。ガイドの周辺スキルを身につけてもらい、閑散期は、ガイドの育成や地域のアドバイザーとして活躍してもらうことで、通年で活躍できる観光人材にしていきたいと考えています。ガイドのビジネススキルのアップは、地域の観光活性化にもつながると思います。そのためには、ガイドの営業力、セルフブランディング力を高めていく必要があります。資格を得れば仕事が来るという受け身の姿勢もを変えていきたいと思っています。

 もう1つは、活躍環境の改善。コミュニティとして、これまで行ってきた優待施設の開拓や、今回始める動画見放題サービス等、ガイドが活躍していく上で必要な環境を整えていきます。個人では難しかったとしても、集団として取り組むことで、解決できる課題は沢山あると思っています。

 先ほどの旅行会社とのマッチングにおいて、品質の見える化を行っていくことで、単に仕事の機会の創出だけでなく、ゲストにその料金を転嫁でき、ガイドの給料も上げられるのではないかと考えています。これも活躍環境の改善の1つです。

 ノットワールドとしては、ガイドの皆様と一緒に、日本のガイド文化を創っていき、ガイドの地位向上を目指していきたいと考えています。

-今後のインバウンド市場をどのように見ていらっしゃいますか。

佐々木 国境が完全に開けば、海外からの旅行者は一気に元に戻ると思っています。短期的には、リベンジ需要によって消費金額は高くなると予想しています。また、中長期的に見て、リモートワークが広がっているなかで、滞在期間はコロナ前より長くなるのではないでしょうか。

 一方、日本人の間には、外国人がコロナを持ってくるという不安があるのも確かです。地域とコミュニケーションしながら、その懸念を払拭し、観光を進めていくことはとても大事なことだと思います。持続可能な観光のためには、観光の意義を観光業以外の人にも伝えていくことが求められているのではないでしょうか。

-今後のツアー造成については、どのようにお考えですか。

佐々木 私たちがどこまで造成に関わるかは、社内でも議論があります。ツアー商品を展開すると、ガイドコミュニティに加わってくれる旅行会社とバッティングする恐れがあります。ツアー造成を拡大していくというよりは、ガイドコミュニティをベースに様々な旅行会社と連携していく方が、旅行業界の発展に寄与できるのではないかと考えています。基本的に、地域のツアーはその地域の事業者が作った方が面白いものができるのではないか、という思いもあります。

 また、ビジネスモデルとして、ガイドはメディアにもなり得ると思っています。コミュニティを通じて、色々な観光事業者と連携しながら、事業を展開していくこともあり得ると思っています。

-最後に、読者である観光事業者へのメッセージをお願いいたします。

佐々木 先月、ビジネス客のツアーを受けた際、滞在先の5つ星ホテルに行った時、ロビーで多くの外国人を見かけました。インバウンドの回復は始まっており、止まっていた心臓が動き出した感じがします。少しずつですが、弊社の築地ツアー等にも予約が入り始めています。

 インバウンドは確実に戻ってきます。あとは、国境を開けるタイミング。開いたら一気に戻ってくる。今、その準備をしっかりとしておく必要があると思っています。

-ありがとうございました。