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旅行商品の主語は「旅行者」ですか?あるいは「旅行会社」ですか?-RT Collection 柴田真人氏

  • 2022年6月17日

旅行するのは誰か

 私がコロナ前からよく感じていたことは、旅行商品の主語が「旅行者」ではなく「旅行会社」になってしまうことが多くなったということです。大前提として、旅行商品を取り扱う旅行会社は旅行者ニーズを第一に考える必要がありますよね。そして、その旅行者ニーズを踏まえて、仕入れや情報発信、商品造成、そして販売を行う必要があります。しかし、その旅行者ニーズ自体が軽視されているのではと思うわけです。

 例えば、旅行商品に使う宿泊施設は企画担当者の好き嫌いやさじ加減で決まったり、直契約があるところをとにかくアサインしたりと旅行会社都合で進められることがよくあります。これらは旅行商品の主語が「旅行者」ではなく「旅行会社」になっています。もちろん価格重視などのマス向けの商品では致し方ないところはあるかもしれませんが、それでも一定の旅行者ニーズをしっかりと反映していきたいところです。

 ホテルの仕事をしていると旅行会社の企画担当者とよく話をしますが、把握をしているのはホテルごとの予約数ぐらいで旅行者ニーズや旅行者データなどの分析をせずに商品ラインナップを決定していると思うことがよくあります。単純に過去の商品ラインナップを理由なく継続したり、営業担当と仲が良いというだけでホテルを使い続けたりと企画担当者の感覚で決まっていることもよくあります。

 結果として、旅行商品の主語が「旅行会社」になってしまうと旅行者ニーズの本質を見失ってしまい、旅行会社のための旅行商品になってしまいます。実際に自分自身が旅行者の立場であった場合にその旅行商品を購入したいかどうかを問うとすぐわかりますよね。

 旅行商品には単純にパッケージツアーの商品以外に、トラベルコンサルタントの知識量やトークスキル、アレンジ力、店舗の雰囲気、ウェブ内の情報、オンラインツアー、参加型のコミュニティなども含まれます。それらすべての主語が「旅行者」になっていると、旅行者に選ばれると思いませんか。そしてそれが旅行会社の価値になっていくと思っています。

 旅行者ニーズを第一に大事にすることで、旅行会社が旅行者の選択肢の1つに入るようにしていきたいものです。

柴田 真人 / Masato SHIBATA
大学生時代にオーストラリアのタスマニア島で過ごし、旅行会社に就職。15年間の旅行会社勤務時代には主に東南アジア方面の仕入れや企画に従事。また、フィリピンでの5年7ヵ月間の海外赴任を通して、アウトソーシング事業の立ち上げからインバウンド事業における現地支店の立ち上げ及び日本マーケット初のチャーター便運航のプロジェクトなどを経験。その後、2018年に合同会社 RT Collectionを設立。