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  • 2021年11月19日

SNSを通じたイベントで若年層にリーチ
サービスのキーワードは「おせっかい」

-SNSではどのような集客を行っているのですか。

大門 先日は椿通でファッションショーを開催しました。SNSの広告を活用してモデル志望の女性約35名に参加してもらい、モデルの卵を育てるというものです。今月は地域の方たちに向けて、路地を活用してマルシェを開催します。12月には「イマーシブシアター」として、宿を劇場にする体験イベントを企画しています。いずれも宿泊客限定ではなく、広く開かれたイベントです。

-サービスのキーワードにしている「おせっかい」について教えてください。

大門 サービス業は、「サービス」と「ホスピタリティ」とに大きく分かれます。「サービス」は「1対多」、「ホスピタリティ」は「1対1」のサービスです。当社ではビジネスモデルとして「ホスピタリティ」の領域を目指し、1人1人に合わせたサービスの提供を行っています。

 1対1のサービスは、一般的に「おもてなし」と言われます。「おもてなし」は相手のニーズを聞いて、それを応用して提供するものですよね。私たちは2015年から宿泊事業を展開していますが、そのなかで気づいたのは、「おもてなし」は特定の人にしか提供できないということです。Nazunaは5室や7室、24室といった小規模な宿ですが、それでもすべてのお客様の情報を収集することは難しい。また、スタッフのヒアリング能力にも差があります。「おもてなし」は感覚的な要素に依るところが大きいと考えました。

 そこで考え出したのが「おせっかい」です。「おせっかい」は、相手の意向ではなくこちらの「やってあげたい」が先行するサービスです。例えば、私が好きなパンを買ってきて、お客様に差し上げる。相手がパンを好きかどうかも、お腹が空いているかどうかもわかりませんが、「これを食べたら喜んでもらえるだろう」というこちらの一方的な感情をサービスで提供するというものです。会社では「おせっかい予算」を確保して、スタッフが各自の裁量で使うことができるようにしています。また、「おせっかい」を浸透させるために、月間の「MOP(Most osekkai player)」を表彰して、商品も出しています。

 「おせっかい」は相手のニーズを聞かないのでリスクも非常に高いですが、その分たくさんのお客様に提供できます。また、お客様からしても情報を与えていないのにサービスを受けられるので、感動の幅が大きくなります。

-実際クレームになったケースもあるのでしょうか。

大門 人によってはそういうこともあるので、社内では「おせっかい」の結果起きたクレームに関しては、会社が責任を取るルールになっています。とはいえ、基本的には相手を思ってしていることなので、それに対して本当にお怒りになる、ということは今のところありません。

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