1兆ドルの市場規模、オンラインツアーの今とこれから【前編】

  • 2021年11月15日

もはや旅行の代替手段ではない

 オンラインツアーが大きく世間に出てきたのは、コロナの影響で簡単には旅行に行けなくなった2020年の春頃、当初オンラインツアーに求められていたのは確かに旅行の代わりとしての役目だった。旅行が好きな人達のフラストレーションを解消するための擬似旅行として受け入れられた商材だが、今はすでに別の役割も持ったリアル旅行とは違う新しい商品になっている。

 その役割の1つが、リッチな旅マエコンテンツとしてのオンラインツアーだ。前述の株式会社ネオマーケティングが行った調査によると、これまでオンラインツアーに参加した人にそのツアーの特徴を聞いたところ、56.4%が「訪問旅行に行く前に役立つ情報が得られる」となっている。また、前述のトラベルズーの調査結果でもオンラインツアー参加の目的を65.1%が「旅の予習」と答えている。



 旅マエやプレ旅マエという単語がインバウンドマーケティングの世界で一般的な用語になって久しいが、これは当然国内旅行にもそのまま使える用語だ。国内の観光地をYoutubeや旅番組で観たり、本屋でガイドブックを買ってみたり、ネットで旅先を調べてみたりといったことも広義の旅マエだが、その選択肢の1つにオンラインツアーが入ることになんら不思議はない。Youtubeや旅番組とは違って、リアルタイムで質問をしたり確認できる点は大きな強みとなる。

 また、生産者にとってオンラインツアーはファン作りのための強力な手法になる。人気が高い国内オンラインツアーでよくある形式として、物販をセットにし、各地の名産品などをツアーに参加しながら家でお酒や食べ物を楽しんでもらうものがある。この形式だとツアー参加者は、生産者の方々から解説を聞き、時には質問しながら各地の味覚を味わうことができる。オンラインツアーによる物販は直接的な売上にも貢献するが、それよりも実際に味わってもらうことでファンを作れることが大きい。

 これは観光地自体にも同じことが言える。物販によってその地の味を楽しんでもらい、更には現地を訪れなければ食べられないようなものをオンラインツアーで宣伝できれば、訪問への意欲を高めることができる。もちろん、そのためにはオンラインツアーでその土地の魅力を見せる必要があるが。

旅マエコンテンツ以外の需要も

 利用者がオンラインツアーに求めるものは他にもある。いわゆる一般では行けない場所へ旅行で行くことだ。例えば、まいまい京都が実施した二条城のオンラインツアーなどは、普段は非公開のエリアを見る事ができた。また、海外のオンラインツアーでもアフリカの秘境やウユニ塩湖、イスラエルなど、たとえコロナがなくとも現実的に仕事や時間、治安、衛生状態などの問題で行きたくても行き難い場所へのオンラインツアーが人気だ。

 他にも、年齢や病気などが理由で旅行に行けない人にも楽しみが提供できる。常に一定層いる旅行へは行けない人々へ提供できるのもオンラインツアーの強みだ。また、コロナ禍で実際に開催することができなかったり、あるいは開催できても参加者の数を制限する必要があるお祭りに代わって、オンラインで開催した「オンライン青森夏まつり」や「さっぽろオンライン夏まつり2021」など、新しい観光イベントが生まれている。

 オンラインツアー市場は多様な需要へ応えるため、様々な商品を開発しながら市場を拡大させている。次回は、観光産業従事者がこの市場に加わるためにはどうすれば良いのかを解説していく。