【会計士の視点】コロナ禍でも旅行事業で増収増益、カギは「GoTo」と「アプリ」-アドベンチャー編

  • 2021年11月5日

非常に様々な経営上の工夫が功を奏す
「GoTo」に合わせツアー造成、テレビCMからアプリ戦略へ

「増収」の謎解き

 このようにセグメント情報や「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」を見ても分からない時には、私の場合、大体以下の順番で調べていきます。

  1. 決算説明資料を精読する(大体決算短信と同時に出る)

  2. IRに電話する

  3. 連結・個別の分析(有報が出るまで分かりません)

  4. 会社ホームページで代表的なサービスをいくつか見て、そのサービスで調べていく

 これらについては、「何をどこまで知りたいか」によって、どこまでやるかが変わってくるのですが、もし会社を調べたい場合、まずは決算説明資料を読むことがおすすめで、次点がIRへの電話で、それ以外もやるのは「さて頑張るか」という気持ちでやるイメージです。(決算説明資料は有報にも載ってないような情報が分かりやすく載ってることが多いので、かなりおすすめです)

 今回は決算説明資料を読み込めば大体理解できたので、そこで終わっていますが、もし決算説明資料を読んでも分からなければ、おそらくIRに電話させていただいていたかなと思います。

 今回の謎は「なぜ増収したのか」「なぜ利益を確保できたのか」「そもそもコンシューマ事業とは何で、どういう儲け方をしているのか」という点にあるので、その点が分かるようなものがないかなという目線で上から見ていくと、まずP13で、連結業績の中で各社別の収益・営業利益の表が見つかりました。

(単位:百万円)
2021年6月期 第4四半期決算説明資料より抜粋

 これを見ると2つの重要なことが分かり、

  • 「収益」については当社(アドベンチャー社)よりもコスミック流通やコスミックGCの方が大きく、この2社が増収したことがトータルでの増収要因

  • 「利益」については前期も当期も大部分を当社(アドベンチャー社)で出しており、利益についてはアドベンチャー社を分析するのが重要


 というのが分かります。

 そしてコスミック流通とコスミックGCが何をしているかを調べると、これは有価証券報告書のP8の「関係会社の状況」のところに記載があり、コスミック流通はチケット2次流通・両替事業、コスミックGCがギフトチケット販売ということでした。

 これだけだと「なんとなく分かるような、分からないような」くらいのイメージしか持てなかったので実際にこの社名で検索をすると、コスミック流通が「J-market」という金券ショップを、コスミックGCが「galireo」というギフトカード・商品券のセレクトショップをやっていることが分かりました。

 つまり、増収要因は必ずしも旅行だけではない、金券ショップやギフトカード・商品券のセレクトショップといった、別種類の事業もおこなっていたことが大きいことが分かります。

 このように「増収」の謎については、必ずしも旅行事業が好調だったわけでもないということが分かりましたが、ただ「黒字維持」については、当期についてもアドベンチャー社単体の影響が大きく、つまり旅行事業で利益を確保できたということで、次にその謎に迫りたいと思います。

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