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コロナ収束後に向け、地域を巻き込んでインバウンド誘致を進めるー徳島ホテル アオアヲ ナルト リゾート総支配人 高橋裕二氏

  • 2021年10月4日

家族連れをターゲットにアクティビティを充実
重要なのはホテル単体ではなく業界全体で行動を起こすこと

-修学旅行で利用されるのは近隣の学校ですか。

高橋 大半は中国・四国エリアの学校で、今回初めてご利用いただいた学校もあります。コロナ前から修学旅行受け入れの情報は発信していましたが、通常だと修学旅行で中国・四国から徳島を訪れるケースはほとんどありません。コロナ禍になり、近隣県や四国島内で受け入れ可能な宿を探されたときに当ホテルの情報を見つけ、選んでいただけたのではないかと思います。

-子どもの仕事体験をはじめとする様々なアクティビティを用意されていますが、実施の経緯や狙いについてお聞かせください。

高橋 オープンから4年経った1995年頃は、客室稼働率がどんどん下がっていた時期でした。そのような状況の中で、名物の渦潮があるだけではお客様に選んでいただけないことに気づき、何をホテルの売りにするべきか検討しました。そこで地元の魅力を全国に発信する方向へ切り替え、郷土料理バイキングなどの地産地消のベースを作り上げました。

鳴門わかめ体験ツアーの様子

 また当時は高級志向が高まり、外資系のホテルが次々と増えていた時代でした。我々が勝負できるのは富裕層ではなくお子様連れのファミリー層だろうと思い至り、家族連れに楽しんでいただけるアクティビティを充実させることにしました。お仕事体験は子ども向けの職業体験型テーマパークから着想を得て、ベルスタッフやバーテンダー、パティシエなど、ホテルのお仕事を体験していただこうと2011年にスタートしました。

-コロナ収束後を見据えた取り組みについてお聞かせください。

高橋 開業以来30年、名物の渦潮と阿波踊りを売りにして、地産地消の料理と合わせた販売戦略を行ってきましたが、ホテル単体で動くには限界があると感じています。また、四国はインバウンドのお客様の数が少なく、コロナ後にどうやって誘致していくか、鳴門や四国が一体となって取り組んでいくことが重要だと考えています。そこで2019年から地域や各団体と連携した活動をスタートしました。

 まず地元の有志と撫養街道まちづくり協議会を立ち上げました。ホテルスタッフにもバックアップに入ってもらいながら、徳島経済研究所やイーストとくしまDMOなどの団体と協力し、四国の玄関口として鳴門の認知度をさらに高めていく活動を行っています。

 そして2020年には国土交通省から助成金を受け、鳴門全体を巻き込んで欧米豪向けのコンテンツ造成を行いました。まだ具体的な成果にはつながっていませんが、コロナ収束後に備え、今のうちから欧米豪向けに鳴門の魅力的なコンテンツ発信を始めています。

 さらに今年は、観光庁の助成事業2件に参画しています。1つは鳴門市が主幹の「地域の観光資源の磨き上げを通じた域内連携促進に向けた実証事業」という既存観光資源の磨き上げを目的としたものです。もうひとつはイーストとくしまDMOが採択された、「既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業」です。

阿波藍ルーム

 また今年の7月に、当ホテルは徳島県が旗振りをして発足した藍産業振興協会と協定を結びました。その先駆けとして2019年には、徳島を代表する藍染めの匠に客室の障子や襖などを染めていただいた「阿波藍ルーム」という客室を新設しました。インバウンドのお客様にも喜んでいただける客室だと思います。

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