「ハイブリッド型MICE」で需要喚起、アフターコロナの誘客へ-福岡市経済観光文化局観光コンベンション部長 中村義治氏

地域の特性を活かし「都市型ワーケーション」を推進
オンラインとリアル、双方への支援で観光産業の回復を目指す

-コロナ禍が長期化していますが、新たに取り組まれている施策はありますか。

中村 旅行需要の低迷が続くなか、テレワーク等の働き方の多様化を背景に、旅行先で仕事をしつつ余暇を楽しむ新しい旅行スタイルとしてワーケーションが注目されはじめています。福岡市では、他都市と比べビジネス客が多いという特性を踏まえ、福岡市のビジネス環境と魅力ある観光資源を活かした都市型のワーケーションを推進しています。これにより長期滞在や市内回遊を促進し、ビジネス旅行による消費の拡大を目指しており、市公式のワーケーション専用サイト「W@F(ワフ)」での関連サービスの発信や、11の旅行会社による福岡市の魅力を体感できるワーケーション旅行商品の造成・販売を実施しています。

 今年度、ワーケーション旅行商品については、ワーク要素とバケーション要素を組み込んだ3泊4日以上のツアーに対して1人1泊あたり5000円の助成を行うほか、希望に応じて福岡の企業等とのビジネスマッチングの場も提供しています。本事業を通じて福岡市の働きやすさや過ごしやすさを体感してもらうことで、長期滞在や再来訪を促進し、ひいては移住や企業誘致に繋がればと考えています。

 また、2020年度は修学旅行生も大幅に減少し、観光産業に影響を及ぼしています。そこで福岡市では都市圏の自治体等と連携して、修学旅行等による周遊観光を推進し、市域内の宿泊・飲食・小売等の事業者の活性化を図っています。主な取り組みとしては、市内に宿泊する修学旅行や、市内の小学校が行う教育旅行への貸切バス代支援、観光施設や宿泊施設等の観光関連事業者に対する体験学習プログラムの開発支援、修学旅行等で来福した学校に対する体験学習プログラムの参加費支援を行っています。また今後、修学旅行等の特設ホームページを制作し、情報発信していく予定です。

-MICEのハイブリッド開催支援にも取り組まれています。

中村 コロナ禍は、MICE施設をはじめ主催者や関連事業者など広範囲に渡って影響を与えています。そのような状況下で少しでも需要を喚起し、関連事業者の事業継続を図るため、MICEハイブリッド開催への支援を行っています。

 本支援はMICE施設とMICE主催者を対象としています。施設向けの支援では、ハイブリッド開催が可能となる環境を整えることで、施設の対応力強化、ひいては施設の利用促進が図られればと考えており、オンライン配信に必要なカメラ・パソコンなど映像・通信機器等の購入費や、通信環境整備費等の助成を行っています。(※編集部注:施設支援の募集は終了しました)

 また、主催者向けの支援では、福岡市内でハイブリッドまたはリアルで開催されるMICEを対象に、ハイブリッド開催で必要となるオンライン配信に係る経費や、リアル部分における感染拡大防止のための安全対策経費を支援しています。少しでも需要を喚起し、MICE開催がもたらす波及効果などにより業界への一助になればと考えています。

 さらに、今年度よりコンベンションやビジネスイベントだけでなく、会議等の参加者が市内に延べ20人泊以上するミーティングやインセンティブツアーも支援対象としています。

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