「日本の旅行者をお迎えする日を期待して」台湾の魅力を発信し続ける-台湾観光協会東京事務所所長 鄭憶萍氏

防疫最優先に尽力する台湾は安心安全の旅先
台湾を思い出してもらうPR戦略も積極展開

 2019年の日本と台湾の交流人口は過去最多を記録し、さらに拡大が期待されたところに、コロナ禍に襲われ、2020年は大きく落ち込んだ。台湾自体は、感染の抑え込みが順調で、パラオとのドラベルバブルが開始されるなど、海外旅行の再開に向けて模索している。「日本の状況次第で、日台間のトラベルバブルも可能では」。そう期待を示す台湾観光局/台湾観光協会東京事務所所長の鄭憶萍(テイ・イーピン)氏に、台湾の現状や日本市場での取り組みになどについて聞いた。インタビューは4月16日に実施した。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

台湾観光局/台湾観光協会東京事務所所長の鄭憶萍(テイ・イーピン)氏
-2020年の日本人訪問者数の状況はいかがでしたでしょうか。

鄭憶萍氏(以下敬称略) 2019年は、訪台日本人約217万人、訪日台湾人約491万人となり、いずれも過去最多を記録。交流人口が700万人を突破しました。しかし、2020年はやはり新型コロナウイルスの影響が大きく、訪台日本人数は前年比87%減の約27万人に大幅に減少し、残念な結果に終わってしまいました。

-コロナ対策が成功していると言われる台湾のホテルやレストランなどの現状を教えてください。

 台湾では、2003年のSARSの経験を生かし、新型コロナウイルスの防疫対策はは取り組みが早かったこともあり、極めて効果がありました。ホテルやレストランについては、外国人旅行者が激減しているため、影響を受けているところもありますが、海外旅行ができなくなり国内旅行の需要が増加しました。

-台湾の国内旅行の回復は早かったということでしょうか。

 現在、台北など都市部から地方に旅行する人は多くなっています。台湾でも日本のGo Toトラベルと同様の需要喚起策がおこなわれ、それを利用して普段よりグレードアップしたホテルに宿泊する国内旅行者も増えました。国内旅行で台湾の観光産業を応援しようという空気が生まれ、ホテルによっては、すでに昨年の段階で、前年を超える集客に成功し、過去最高の売上を記録したところもありました。

-台湾版Go Toトラベルの内容はどのようなものでしょうか。
「安心旅行キャンペーン」

 「安心旅行キャンペーン」と呼ばれ、約39億台湾ドル(約141億1800万円)の予算を投じて、約638万人の国内旅行の需要喚起を図りました。当初は2020年8月1日から開始予定でしたが、感染状況が落ち着ついたことから、1ヶ月前倒しで始まりました。まず、6月中に中央感染症指揮センターや行政の専門家達が観光地に出向き、現地の状況を確認し、その後に旅行業関係者等が施設などの防疫対策の確認と視察、検討をおこない、それから旅行者の送客を開始しました。

 キャンペーンは10月末まで実施され、個人旅行や団体旅行に加えて、社員旅行、学生などを対象に2泊3日以上の日程ほかそれぞれのカテゴリー別に助成。さらに、金門、馬祖、澎湖などの離島への旅行は補助金がプラスされ、約235億台湾ドル(約850億700万円)の経済効果を目標に掲げ、大成功に終わりました。

 「安心旅行キャンペーン」では、これまで以上に自然豊かな景勝地への観光が人気を博し、台湾を再発見できる機会にもなったようです。台湾観光局では、毎年ひとつのテーマを掲げたグローバルプロモーションを展開しており、昨年のテーマは「山岳旅行年」であったことから、森林浴やハイキングなど自然を楽しむ旅行者が増えるきっかけになりました。

 さらに、「振興三倍券」と呼ばれる消費振興券も提供され、「安心旅行キャンペーン」との相乗効果で、消費額を押し上げることに成功しました。

次ページ >>> 日本とのトラベルバブルの可能性