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アジア系トラベルテック企業から見るポストコロナ訪日マーケットの展望(後編)

求められるのは安全性やホスピタリティ

-インドネシアは世界最大のイスラム教国として知られています。日本の宿泊施設経営者がより多くのインドネシア人観光客を受け入れるために提案はありますでしょうか。

エローザ イスラム教徒は1日に5回の礼拝をすることが義務付けられているため、イスラム教の聖地であるサウジアラビアのメッカの方角を何らかの方法で客室に表示することができれば、非常に喜ばれると思います。このサービスはインドネシアのホテルでは比較的一般的です。

 またインドネシア国内外のホテルの中には、事前リクエストがあれば、客室内のミニバーからアルコール飲料を取り除くサービスを行っているところもあります。更に、ホテルのレストランでハラール認証の食品や料理があると、イスラム教徒のインドネシア人のお客様には非常に喜ばれるでしょう。とはいえ日本でハラール認証を受けた食品や料理を提供するのは容易ではありません。その場合でも、豚肉やアルコールを使わない料理専用のビュッフェコーナーやメニューを用意したり、それぞれの料理の原材料を表示したりすることで、イスラム教徒のお客様に喜んでいただけると思います。

-旅行者のオンライン予約とオフライン予約の傾向について、どのような見解をお持ちでしょうか。

エローザ インドネシアにおけるオンライン予約の傾向は、特にモバイル予約の分野で非常に強く、今後もこの傾向は更に加速していくと考えています。先述のように、tiket.comは幅広い旅行商品の提供だけでなく、言語サポートや支払い手段のローカライゼーション等、インドネシアの消費者のニーズに合わせたサービスも行っています。

 またインドネシア人の平均年齢は28歳から30歳と若く、テクノロジーやデジタル環境に精通していることもオンライン化が加速する要因であると言えます。ある調査によると、インドネシア人は一人当たり1.7台から2.0台のスマートフォンを所有しているそうです。tiket.comはOTAとして、今後もオンライン・モバイルの分野で新しいユーザー体験を提供し、サプライヤーとお客様の利便性の向上に努めます。

Shiji Groupマネージングディレクターのアンソン・ラウ氏

ラウ オンライン・モバイルの傾向は中国でも同様です。特に中国における モバイル予約の成長は目覚ましいものがあります。 OTAの予約の70%から80%はモバイルで行われています。一方で、オフラインでの予約や、オフラインであることの強みと最新のテクノロジーを創造的に組み合わせて予約を促進するオフラインの旅行代理店に対しても、引き続き一定の需要があると考えています。

  例えば中国最大手OTAであるC-tripは、ここ数年で500以上の都市に3000以上のオフラインカウンターを開設しています。また別例として、上海にはVR(バーチャル・リアリティ)体験室を備えたオフラインの旅行代理店があり、お客様が旅行先をバーチャルで体験しながら検討できるようにしていると聞いています。

-トラベルビジョンの読者、特に日本の宿泊施設関係者へのメッセージをお願いいたします。

ラウ 旅行需要は戻ってくると信じています。1年前に中国でインフルエンザが発生したとき、中国のホテルの稼働率はほぼ0%になりました。しかしその後は徐々に回復し、通常の状態に戻りつつあります。日本に関しては、中国と日本の渡航・検疫規制が緩和されれば、中国からの旅行者が爆発的に戻ってくるでしょう。日本の皆様におかれましては、単一のチャネルやマーケットに頼り過ぎず、新たな販売パートナーの開拓も検討し、回復に備えることをお勧めします。Shijiは今後も、日本の宿泊施設に当社のソリューションを提供していきます。

エローザ 同意します。特に今年はより多くの人がワクチンを接種する可能性がありますので、必ず旅行・ホスピタリティ業界は復活するでしょう。tiket.comは、パンデミックが終息した暁には、より多くのインドネシア人、東南アジア諸国及びその他海外地域の人々が日本に気軽に旅行し、休暇を楽しむことができるよう引き続き事業の改善とイノベーションにコミットしていきます。

-ありがとうございました。パンデミックが終息しましたら是非日本にお出でください。