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「銀行はこう使え!」-メガバンク元営業担当が本気のアドバイス vol.2

第2回:銀行員の仕事現場

追い詰められる営業担当者

 銀行の総合職は組織内における何でも屋です。本部を除けば大多数が営業も担当しており、取引先に出向くことが多いため、銀行の営業時間には縛られません。

 営業担当者の業務は、主に「営業活動」、「稟議等の書面作成」、「業績推進」、「会議とその準備」、「本部との調整」に分けられますが、これらは毎年多少のマイナーチェンジこそあるものの、長らく抜本的に変わることなく続いています。この変わらない業務と働き方改革の波が、昨今営業担当者の心身を蝕んでいます。

 銀行の労務管理は非常に厳格で、PCにログインしている時間は勤務時間と見做されます。働き方改革により勤務時間外は半強制的に職場から追い出されるようになりましたが、業務量は減っていませんから、多くの営業担当者は顧客からの依頼に追われ、定められた期日に追われ、雑多な事務に追われ、常に昼食を10分ほどで流し込んで席に戻ります(労務管理上は60分休憩したことになっていますが)。

 加えて、出世レースを勝ち抜くには社内政治が極めて重要です。営業は目標を達成してナンボですが、出世するには数字を上げることと同等かそれ以上に、上司に「評価」されなければなりません。出世のために大して良いとも思っていない金融商品を必死に売って数字を作り、上司の接待に振り回され、営業担当者はますます追い詰められ疲弊していくのです。

血祭り営業会議

 銀行の業績会議ほど不思議な会議も珍しいのではないかと思います。某銀行の不動産向けローンの実態が世間を賑わせていた頃、人格否定とも取れる営業推進手法が話題となりました。営業担当者が上司から浴びせ掛けられた罵詈雑言を見て、当時銀行員だった私は「これとこれは自分も言われたことがある!」と親近感を覚えたものです。

 ストックビジネスからフロービジネスへと変革しようとする中で、ストックビジネスの申し子とも呼べる世代が支店運営を担い、稼ぐノウハウの無い人間が薄っぺらな知識と根性論で業績アップを推進する。本当の意味で顧客から求められるソリューションなどほぼ持ち合わせていないのですから、手数料収受を目的とした金融商品の押し売りになるのは自明で、賢い顧客は当然相手にしません。それでも数字を求められる銀行員は、湿った雑巾からバケツにいっぱいの水を取り出すべく駆けずり回ります。

 そのような環境で行われる業績会議は、文字通りの「血祭り」です。個人の目標、支店の目標を達成する名目で、営業全員の前で一人ずつ順番に吊るし上げられる。そこに建設的な議論があることはまずなく、嬲られる同僚を横目にただひたすら時間が過ぎ去るのを待ちました。業績が悪ければこれが月次から週次、週次から日次へと変わり、しまいにはマンツーマンでの「指導」になります。特に数字を求められる四半期末は会議に加えて日々の「指導」もエスカレートするので、朝食が喉を通らなくなることも日常茶飯事でした。