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【コロナに負けず】エイベックス「itoma」マネージャーの篠田翼氏

  • 2020年7月29日

COVID-19拡大を乗り越え、旅館予約サイトを開設
有料会員の平日宿泊半額で中小旅館とWin-Winに

-OTAなどによるこのような試みは前例があるのでしょうか

篠田氏(写真提供:エイベックス・ビジネス・ディベロップメント) 篠田 国内外を問わず前例がないため、1年間かけて旅館とともにテストマーケティングを実施した。その結果、クローズドなマーケットで平日の宿泊料金を半額にする手法がブランドを毀損するような事態にはつながらないことや、継続的に宿泊客を得られて顧客満足度も高いことなどが分かり、自信を持ってアイデアを実行に移すことができた。

 itomaに掲載する旅館に対しては、宣伝広告費も送客手数料も要求しない。一般的にOTAは宿泊施設の売上の30%から40%程度を徴収しているが、我々のように広告費も手数料もいただかないのであれば、旅館にとっては宿泊料金を半額にしても利益面で大きな差はなく、ビジネスチャンスが増える。

-事前のテストマーケティングの詳細について教えてください

篠田 客室数20室、年間売上高1億8000万円のある旅館で、平日の50%引きを含めて値付けを入念にコントロールした結果、売上高を4億円にまで伸ばすことができた。一方で利用者の反応もテストし、月額2980円で平日の宿泊料金が50%引きとなる会員権を100名限定で発売したところ、2日間で完売した。予想以上の手応えを感じるとともに、平日の50%引きに対する需要の存在も確認することができた。

-itomaに掲載する旅館はどのようにして選定していますか

篠田 宿泊料金や客室数などに関する基準はないが、「旅館としての価値の高さ」に関する独自の基準はある。既存の高級宿泊施設専門サイトのような形にするつもりはない。

 例えば伊豆には創業以来、金目鯛に徹底的にこだわり素晴らしい食事を提供している旅館がある。リピーター率が70%に上る人気旅館だが、1人あたりの宿泊料金は1泊1万2000円で、旅館としての価値は極めて高いといえる。このように、価格に対して提供する価値が大きい旅館を紹介していくことがitomaの役割で、ウェブサイトではその価値を5段階で評価している。

-昨年末にitomaの立ち上げを発表して間もなく、COVID-19の拡大が始まりましたが、これまでにどのような影響がありましたか

篠田 12月に立ち上げを発表してベータ版の提供を開始した時には、正式なローンチの時期を4月としていた。しかしその後にCOVID-19の拡大が始まったので、ある程度状況が落ち着くのを待つこととし、緊急事態宣言解除後の6月に入ってからローンチした。

 今回のコロナ禍では我々も旅館も大きな被害を受けている。しかし厳しい状況のなかでも、できることに前向きに取り組みたいと考え、旅館からは入浴剤を買い取って会員にプレゼントした。また、各旅館から2年間有効の“宿泊権”を、1施設あたり数十万円から100万円程度の枠で買い取ったりもしている。多くの旅館が売上高を大きく落として危機的状況にあるが、金銭的にも精神的にも支えあっていくことが重要だと考えている。