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ANAセールス宮川社長、「ANA経済圏」拡大に意欲、A380のハワイに注力

海外旅行はリピーター化推進
ハワイは「オールチャネル」で販売強化

 ANAセールスは事業の変革を進めている。海外では添乗員付きパッケージツアーの直販化を進め、国内では方面別での製販一体に体制を見直した。グループ内外のパートナーとの連携を強め、より高次元でのシナジー効果もねらう。さらに、全日空(NH)がいよいよ来年5月24日から、成田/ホノルル線に投入するA380型機の販売も本格化。「ANAファンを増やしていきたい」と語る、今年4月にANAセールス代表取締役社長に就任した宮川純一郎氏に、今後の事業展開について聞いた。

-社長に就任されて8ヶ月強が経過しましたが、振り返っての所感をお聞かせください

宮川純一郎氏(以下敬称略) 今年の上期は、各地での自然災害、B787型機の欠航など想定外のことが多かった。海外旅行は前年並みで、国内旅行はふっこう割効果で北海道の需要は回復傾向にあるものの、想定を下回っている。訪日旅行は、規模は小さいながらも前年比30%から40%の伸びを残している。

 主要旅行会社の総取扱高はここ5、6年で15%ほど減少している。旅行業界は右肩下がりというイメージだが、国内外の日本人旅行者は減っていない。NHの利用者数も昨年は対前年比でプラスになり、今年も順調に推移している。しかし、リアルエージェントは旅行需要を十分取り込めていない。ANAセールスも4年連続で取扱高が減っており、新しい価値を市場に提供できていない。これをなんとかしなければいけない。

-ANAグループのなかで、ANAセールスとしてどのような取り組みを進めていますか

宮川 店舗でのパンフレット販売は今でも稼ぎ頭だが、今後規模は縮小していくだろう。そのなかで、ANAセールスとしてはオンライン化を加速させていく。昨年は海外旅行、今年は国内旅行の販売システムを刷新した。

 そうはいっても我々はOTAではない。お客様との接点でANAグループの強みを生かしていくところがポイントになる。これまで以上にグループ会社との横のつながりでシナジーを出し、「ANAファン」を増やしていきたい。

 ANAグループは現在、中期経営計画を見直している。2020年の羽田増枠、燃油価格の推移などをもう一度精査して、22年までの絵をあらためて描き、年明けには発表する予定だ。ただし、基本戦略は変わらず、下振れするイメージはない。

-今後の海外旅行の販売戦略をお聞かせください

宮川 看板商品の添乗員付きツアーは、昨年から旅行会社経由の販売をやめ、自社で直販する体制にした。お客様と直に接することで、ツアーに対する信頼感や魅力を伝えている。直販化で流通コストが下がり、それなりに需要もついてきた。今後拡大していくためには、ANAファン、ひいてはANAマイレージクラブ会員を増やすことでリピーター化を進める必要がある。

 現在の添乗員付きツアーのリピーター率は4割ほど。これを6割から7割にもっていきたい。ただ、新規流入があってのリピーター化でなければ、頭打ちになってしまう。

 パッケージツアーの市場が小さくなっていくなか、自社と他社の商品を併売している店舗でANAセールスの商品をどれほど売ってもらえるのか疑問だ。旅行会社経由の売上だけに依存していてはジリ貧になってしまう。店舗での代売は成長分野とは言えないだろう。自社で販売していける体制を強化していく必要がある。

 一方、廉価型旅行商品はウェブ化を進める。廉価型については、固定価格から時価型に変えていかなければ、市場での競争力がなくなる。