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海外医療通信 2018年8月号【東京医科大学病院 渡航者医療センター】

  • 2018年8月30日

 ※当コンテンツは、東京医科大学病院・渡航者医療センターが発行するメールマガジン「海外医療通信」を一部転載しているものです

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東京医科大学病院・渡航者医療センター

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海外医療通信 2018年8月号  東京医科大学病院 渡航者医療センター

・海外感染症流行情報 2018年8月号

(1)コンゴ民主共和国でエボラ熱の新たな流行が発生

コンゴ民主共和国の北東部にある北キブ州で7月頃からエボラ熱の流行が発生しています。8月22日までに患者数は103人(疑いを含む)で、63人が死亡しました(WHO 2018-8-24)。同国の北西部では今年の4月からエボラ熱の流行が発生しており、この流行は7月までに終息しました。新たに流行の発生した北キブ州はウガンダやルワンダと国境を接し、交通の盛んな場所です。また、政情不安定な地域で100万人近い難民が生活をしています。このため、今回の流行の制圧には困難が予想されます。WHOは開発段階にあるエボラワクチンの接種を患者の接触者や医療従事者などに行っています。

(2)タイでジカウイルス感染の妊婦に小頭症の胎児発生

タイで行われた最近の調査では、東南アジア亜型のジカウイルスに3人の妊婦が感染していることが明らかになり、このうち一人の妊婦(妊娠9週で感染)の胎児に小頭症が確認されました(Emerging Infectious Disease 24:1759, 2018)。ジカウイルスにはアフリカ型とアジア型があります。アジア型はさらにアメリカ亜型と東南アジア亜型に分けられ、前者は妊婦が感染すると胎児に小頭症をおこすことが知られています。一方、東南アジア亜型で小頭症をおこすことは稀と考えられてきました。今回の調査結果は、東南アジアで妊婦がジカウイルスに感染した場合も、胎児に小頭症をおこす危険性があることを示すものです。

(3)東南アジアでのデング熱流行状況

東南アジア各地は雨季を迎え、デング熱の流行が報告されています(WHO西太平洋 2018^8-16)。ほとんどの国で患者数は例年並かそれ以下ですが、今後も暫く雨季が続くため警戒が必要です。

(4)ミャンマーで住血吸虫症が流行

ミャンマーで住血吸虫症の患者が今年だけで500人以上発生しています(FitForTravel 2018-8-2)。住血吸虫は川や湖などの淡水中に棲息しており、この水に接触すると皮膚から感染し、肝臓や腸の障害をおこします。このため、流行地域では淡水で泳がないように注意する必要があります。首都ネピドー近郊のインレー湖も住血吸虫の感染リスクがあるとされています。

(5)最近の中東呼吸器症候群(MERS)の流行状況

2017年7月から1年間に全世界で189人のMERS患者が発生し、60人が死亡しました(WHO 2018-8)。患者発生国は、サウジアラビアが182人で最も多く、オマーン、UAEが各3人、マレーシアが1人でした。患者は中高年者が多く、心臓病など慢性疾患のある者が7割を占めています。感染経路はラクダとの接触が37人、患者からの二次感染が45人でした。中東などの流行地域に滞在する渡航者は、ラクダと接触しないように十分な注意をしてください。

(6)米国CDCがジカウイルスの性感染予防指針を更新

米国CDCは8月にジカウイルスの性行為感染に関する予防指針を更新しました(米国CDC MMWR 2018-8-7)。主な変更点は、流行地域から帰国した男性が安全な性行為を心がける期間を6か月から3か月に短縮した点です。ジカウイルスは蚊に媒介される感染だけでなく、性行為による感染もおこします。これを予防するため、流行地域に滞在した男性は症状がなくても、帰国後一定期間、安全な性行為(コンドームを使うなど)を心がける必要があります。これは感染者の精液中にウイルスが長期間検出されるためですが、精液中のウイルスに感染性があるのは最長3か月との知見が最近得られています。なお、WHOの指針ではこの期間が引き続き6か月になっています。

・日本国内での輸入感染症の発生状況(2018年7月9日~2018年8月12日)

最近1ヶ月間の輸入感染症の発生状況について、国立感染症研究所の感染症発生動向調査を参考に作成しました。出典:https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr-dl/2018.html

(1)経口感染症:輸入例としては細菌性赤痢3例、腸管出血性大腸菌感染症8例、腸チフス・パラチフス3例、アメーバ赤痢3例、A型肝炎4例、ジアルジア症2例が報告されています。腸管出血性大腸菌感染症は6例がベトナムでの感染でした。

(2)蚊が媒介する感染症:デング熱は10例で、タイでの感染が3例と多くみられました。今年のデング熱累積患者数は84例で、昨年同期の124例に比べて減少しています。マラリアは4例で、アフリカでの感染が2例、アジア(インド、ベトナム)が2例でした。

(3)その他:麻疹が2例(タイで感染)、風疹が1例(フィリピンで感染)、百日咳が1例(米国で感染)報告されています。今月はアフリカのマラウイでQ熱にかかった患者2例が報告されました。これはリケッチアによる熱性疾患で、ペットや家畜などの動物から感染します。

・今月の海外医療トピックス

ガンジス川の汚染問題

「インドで沐浴をした」という若い日本人トラベラーに出会うことがあります。私が出会うのは、帰国後体調が悪くなってからですが、皆さん「ヤバイかな…?と思ったけど、せっかくだから入っちゃった」と言われます。では、実際にガンジス川の汚染状況はどうなっているのでしょうか。

今月、インドの環境森林省が興味深い発表をしています。ガンジス川の上流から下流の複数の地点で、溶存酸素や大腸菌量などを指標に水質調査を行いました。その結果から、飲水や沐浴に適している場所を緑フラッグ、適していない場所を赤フラッグで示しました ( http://125.19.52.219/wqi/ ) 。ヒマラヤ山脈南麓の上流域は緑フラッグですが、デリー東方に位置するヒンドスタン平原北端からバラナシ、コルカタなど下流域のほとんどは赤フラッグで示されています。ヒンドゥ教徒にとって聖なるガンジス川で沐浴をすることは大切な慣わしですが、日本人トラベラーには、どうか旅の高揚感を抑え、健康を害する可能性が高いガンジス川での沐浴を控えていただきたいところです。なお、今月のNature INDIA誌にもガンジス川の汚染問題についての記事が掲載されています。(医師 栗田 直)

参考https://www.natureasia.com/en/nindia/article/10.1038/nindia.2018.101

・渡航者医療センターからのお知らせ

(1)第21回渡航医学実用セミナー「海外勤務者の健康管理対策~実務編」(当センター主催)

当センターでは渡航医学に関連するテーマのセミナーを定期的に開催しています。今回は前回のセミナーで取り上げた「海外出張者の健康管理」の具体的対応策について、日本渡航医学会産業保健委員会から報告します。なお、今回は同委員会および海外邦人医療基金との共催セミナーになります。

・日時:2018年9月26日(水) 午後2時00分 ~ 午後4時30分

・場所:東京医科大学病院6階 臨床講堂

・対象:職種は問いません ・参加費:無料 ・定員:約200名

・申込方法:8月末から海外邦人医療基金のホームページ(http://www.jomf.or.jp/)で受付けます。          

・プログラム:近日中に当センターHPに掲載いたします。 http://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/tokou/seminar.html

(2)トラベラーズワクチンフォーラム研修会(バイオメデイカルサイエンス研究会主催)

今回の研修会は下記の日程で開催されます。「大規模集会における感染症対策」「狂犬病ワクチン」「留学生へのワクチン接種」に関する講演があります。

・日時:2018年9月15日(土)午後1時半~午後5時半 ・会場:国立国際医療研究センター

・プログラムなど:バイオメデイカルサイエンス研究会のホームページをご覧ください。https://www.npo-bmsa.org/研修会-セミナー情報/