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ドイツ、日本回復に向けプロモ強化、周辺国とも協力-GTM2016

  • 2016年5月12日

都市と自然の組み合わせを訴求
今夏にはオーストリアやスイスとセミナーも

16年は自然と周年イベントで日本市場を底上げ

GNTBのケッテルハーケ氏  GTNBでは、今年は新たなプロモーションテーマを設定し、日本市場の底上げをねらう。まず注力するのが自然。ケッテルハーケ氏はインタビューのなかで、「日本人旅行者にはヨーロッパの人々のような休暇の過ごし方は難しいので、戦略を変えた。都市と自然を組み合わせ、町から周辺の自然へのデイトリップを提案していく」と明かした。

 同氏はその具体例も紹介。「たとえばドレスデンでは100年以上前の蒸気船に乗りながら川沿いの古城を眺め、船上でワインを楽しむ。フランクフルトでは、ウエストフランクフルトのワインの産地『ラインガウ』を訪れ、中世の修道院が多くの残り、映画『薔薇の名前』の舞台にもなった地域を巡ることもできる」とアピールする。

サプライヤーとの商談もおこなわれた  また、創立800周年を迎えるドレスデンの聖十字架教会合唱団をフックに、ドイツのクラシック音楽をSIT向けに訴求していく。「音楽専門のオペレーターとも協力し、毎年開催されているバッハ、ベートベン、モーツァルトなどのフェスティバルも訴求していきたい」考えだ。

 来年はバイエルン公国のヴィルヘルム4世がビールの原料をホップと麦芽と水のみに定めた「ビール純粋令」の制定から500周年にあたることから、「ビール大国ドイツ」もアピールしていく。「ドイツにもさまざまなタイプの醸造所がある。ビールは知らない人同士を結びつけるもの。日本人にもきっと楽しめるはずだ」と期待を寄せる。

マルティン・ルター記念館のエントランス  このほか、17年はマルティン・ルターがローマ教会に抗議してヴィッテンベルク市の教会に95ヶ条の論題を打ちつけた、いわゆる宗教改革から500周年を迎えることから、観光の訴求ポイントとして取り上げていく方針。GNTBディレクター・マーケティングの西山晃氏によれば、日本では宗教よりも歴史的意義に焦点を当てるとともに、当時のヨーロッパの思想の巨人であり、自ら賛美歌を作るなど後世の音楽にも多大な影響を残したルターの人となりも紹介することで、旅行需要につなげていきたいという。

 GNTBでは、旅行会社やメディアとの協業に加えて、ソーシャルメディア、ブロガーなどを活用してさまざまな形で露出をはかりながら、プロモーションを展開。また、ケッテルハーケ氏によればドイツを訪れる日本人うち70%がオンラインで情報収集し、50%がオンラインで予約していることから、今年はスマートフォンでのキャンペーンを初めて実施する予定だ。


今夏に周辺国観光局と共同でセミナー実施

プレ・オープニング・イベントはクヴェトリンブルクの聖セルヴァティウス教会で開催された  ドイツに限らずヨーロッパへのレジャー市場は苦戦が続いている。そのような情況のもと、オースリア航空(OS)は今年9月に日本路線から撤退することを表明。GTM2016に参加した旅行会社からは、「ヨーロッパ線の座席確保で影響は避けられないだろう」との声も聞こえる。

 ルフトハンザ航空(LH)やスイス・インターナショナル・エアラインズ(LX)が座席を増やす可能性があるが、LHの羽田線については、訪日旅行の需要が増えているため、アウトバウンドの座席が出にくい状況にあるという。また、LOTポーランド航空(LO)の成田/ワルシャワ線も好調で、さらなる座席確保も難しいようだ。10月からはイベリア航空(IB)が成田/マドリード線を再開するものの、「ヨーロッパ線での座席確保は苦労が続くかもしれない」と吐露する旅行会社もいた。

マグデブルクのアイコン的建築「緑の砦」。建築家フンデルトヴァッサーの最後の作品  こうしたなか、GNTBは日本独自の取り組みとして、周辺国の観光局との共同プロモーションを計画している。今年8月22日には大阪でオーストリア観光局と、翌23日には東京でオーストリア観光局およびスイス観光局と共同で、それぞれ旅行会社向けのイベントを開催するほか、今秋にはメディア向けのワークショップも計画している。ケッテルハーケ氏は「各観光局とも予算が限られているなか、ヨーロッパを1つのデスティネーションとして共同で訴求していきたい」と新たな取り組みに意欲を見せる。