2013年海外旅行の減少要因-今、何が起こっているのか JTBFシンポジウム

  • 2013年8月1日

 プラス成長が予測されていた2013年の日本人出国者数だが、実際は2月以降は前年割れ。4月以降は2ケタ減の推移で、下げ止まりの気配は見えない。日本人の渡航先の約4割を占める韓国・中国の不振が最大要因だが、実はそれ以外のデスティネーションの伸び率も前年に比べて縮小している。7月17日に公益財団法人日本交通公社(JTBF)が開催した海外旅行動向シンポジウムで、主任研究員の黒須宏志氏は「中国・韓国のマイナスは特定が明らかな特殊要因によるもの。他の方面の減少に波及することはあり得ない」と指摘。現在の海外旅行市場に影響を与えている要因について4つの仮説をあげ、検証した。


検証1・航空座席供給量と需給バランス

 黒須氏が2013年の日本人出国者数が1900万人になると予測した12年12月当時、「13年1月から6月の航空座席供給量は3.9%増」と見込んでいたが、実際には1.7%増にとどまった。また、インバウンドとアウトバウンドのバランスについては、「インバウンド需要は戻ってくるが、需給関係がひっ迫するほどではない」と予測していたものの、実際は韓国、台湾、香港、東南アジアを中心に予想以上のペースで回復している状況にあるという。

 しかし、それが原因でアウトバウンドの座席が減っているかというと、「現状はそういうことにはなっていない」と断言。日本発着の座席数と旅客数に対するインバウンド、アウトバウンドの寄与度、消席率のそれぞれの推移を見ると、12年9月以降はアウトバウンドとインバウンドの寄与度が逆転し、旅客数の急激な減少に伴い消席率が低下。それを追いかけるように座席数も右肩下がりとなり、13年2月には座席数と消席率がプラスマイナスゼロの一定の推移となった。

 つまり、「アウトバウンドの減少をインバウンドが埋めて、ロードファクターも前年と同じくらいで動かない状況」で、黒須氏の試算では現在のロードファクターは6割後半から7割程度。乗り継ぎ客を入れると75%くらいでの推移となり、「特定の月や方面によってはあてはまらないかもしれないが、全体平均では需給がひっ迫している状況ではない」という。