itt TOKYO2024

観光立国推進ラウンドテーブル 参加者一覧と問題意識

  • 2013年2月19日

参加者が発表した観光産業に対する問題意識(2)

中村好明氏
ドン・キホーテ社長室 ゼネラルマネージャー

 観光立国は日本を取り巻く環境そのものが大きく変わってきたことが前提にある。そうでなければ、流通事業者であるドン・キホーテがこの場にいる、ということはない。

 観光立国で大切なのは、観光立国の前提が変わったことを国民全体が理解することだ。インバウンドの視点から見ると、日本のサービス業、製造業、商店街などすべての産業が観光業である。当然弊社も観光業だと認識している。国内、アウトバウンド、インバウンド、日本全体の観光を盛り上げることなしに一つ一つの自治体や企業が成功することはできないという前提で、議論していきたい。


ハリス・マイケル・ジョン氏
株式会社キャニオンズ 代表取締役社長

 グローバル化の中で競争力が大切になるが、日本は世界で戦うノウハウを持っていない。観光協会は世界の基準やベンチマーク、開発のプロセスの理解もない。観光の貢献度の現状と今後のビジョン、利益創出の仕方などを地方に提供する必要がある。

 そしてその評価を出してあげることも重要。ベンチマークとして評価基準を作っていくべき。これによって旅行者の満足度が上がり、リピートする。受け入れ側としてはモチベーションにもなる。

 将来的な観点では規制作りが大切。エコツーリズムは増加しているが、規制は何もない。観光を増やそうとする今こそ安全基準、自然資源に対する管理システムの構築が必要だ。


東良和氏
沖縄ツーリスト代表取締役社長

 観光産業は国内からも含めて、外から外貨を稼ぐ輸出型産業であることを社会で認識しなくてはいけないが、国の戦略として横断的にはできていないと思う。例えば空港の着陸料、使用料、テナント料は来訪を促す金額ではない。

また、インバウンドでは周遊型には必ず通訳案内士が同行するなどの規制をかけてほしい。海外に行けば現地のガイドを入れなくてはいけないということがある。

もうひとつ、シーズナリティの問題では、オフをピークにする政策が必要だ。例えば国、県、市町村の予算は6月の議会後、9月くらいから事業が開始されて繁忙期の3月に実証実験が行なわれ、年度の前半は機能しない。会計年度ひとつをとっても無駄があると思う。


山内弘隆氏
一橋大学 大学院商学研究科 教授

 観光立国宣言から10年がたち、国や行政の主導から産業自体が自立する節目であると思う。競争力を高めることが必要だが、国際競争力のリソースはある程度持っていると思う。日本の、特に製造業は生産効率を上げる管理システムを極めており、世界的にも優れている。観光業がいかに取り入れていくかが次のステップだ。

 人材育成も重要な問題。私自身大学にいるが、日本では教育を与える方が社会、業界に必要な人物像に疎い気がする。大学もかなり硬直的で、変わっていかなくてはいけない。観光で有名なコーネルやローザンヌの教育内容を見ると、大学と専門学校をコラボレーションした教育も考えられと思う。


山口敦史氏
全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会青年部 次期青年部長
ほほえみの宿 滝の湯 専務取締役

 今、旅館や温泉地は変わってきている。バブル後、毎年右肩下がりで売上げが減り、赤字になって、旅館の数が大きく減少した。この状況のなか、旅館が協力し合って地域がまとまり、温泉地の活性化策が打ち出せるようになってきた。次は県をまたいで広域で協調しあいながら地域の価値や魅力を運用していくことが大切だ。

 いままでは自分の宝物を隠して外に出さないようにしていが、これからは積極的に出していくことでさらに光り輝く、という考え方になるべきで、そういう風にしないと生き残っていけないと思う。日本の文化を伝承し、後世に引き継ぐ事業である。法的な部分や世間的なイメージを変えていくためにも、自分たちが魅力ある事業をどんどん行なっていく必要があると思っている。

>>イベントレポート「観光立国10年の課題-産業全体の問題点と課題を議論」本文はこちら