WTTC、その意義と今後の課題-旅行業界の変革にむけて

■求められる変革、旅の質の向上

東京会場で全体司会を務めたBBCキャスターのニック・ロス氏

 サミット閉幕後の記者会見で田川氏は、「世界のすべての産業が変革を求められていると思うが、国際交流を担当する旅行産業が最も変革を求められている」との認識を示し、特に日本の旅行産業は震災復興や少子高齢化、デジタル化、経済的要因に加え、「消費者の動きが震災後に大きく変化している」と分析。

 その上で、「今回のサミットをきっかけにして、次なるステージへの大いなる仕掛けをしなければならないということを改めて感じた」と語った。新たな仕掛けの例としては、訪日旅行におけるクール・ジャパンやビジット・ジャパンの戦略や、スポーツやメディカル、エコといったニューツーリズムなどが挙げられるものの、「もっとこれを具体化していく必要がある」という。

 また、「旅行の質をどう高めるかという点も大きな課題になった」と指摘。サミットでは、インターネット技術が進化し、ソーシャルメディアなどが影響力を増す世界の中で、いかにして「旅行のリアルな部分」を強化していくべきかについて議論された。

 田川氏は、この点について「旅行に関わる産業のそれぞれが、地域の宝、素材をしっかりと探し出し磨いていくプロセス」を、旅行業だけでなく宿泊業や鉄道事業、航空事業がそれぞれの役割の中で実行することによって実現できるとの考えを説明。

 特に訪日外客数の増加に向けた最重要課題として、「日本の地方、あるいは都市部を含めたコンテンツをしっかり作り上げること」をあげる。例えば、「LCCで自由に入って来られる方に、何のランドのコンテンツを差し上げるのか。それぞれの地域の素材をしっかりと商品化していく」ことが、「宝」を磨くことであるという。

 磨きあげた「宝」を消費者に伝える手段がインターネットとなるが、田川氏は、「個の部分はアピールしているが、全体として伝えるということについてはまだまだ十分ではない」との認識。このため、サミットを「終わりではなく始まり」と捉えて日本の中で「今回の結果やプロセスをしっかりと伝えていきたい」という。