羽田特集:航空券ホールセラーから見る需要動向(1)レジャー取込に手応え

羽田国際化の需要効果はまだ限定的

また、エヌティーエス(NTS)航空営業部次長の篠原和儀氏は、航空券ホールセールの立場から、「正直なところ、全体の需要が増しているという実感はない。現状はまだ限定的。昼間の時間帯にロングの路線が就航するようになれば、状況は変わるだろう」との認識だ。クロノス・インターナショナル営業部販売課販売推進チーム係長の加本謙吾氏も、世間の注目は集めているとしつつ、具体的な国際線の中身については「まだ認知度が足りない」と見ている。
同じく、チャイナエアライン(CI)の航空券を扱っているダイナスティーホリデーも、「現在のところ、羽田国際化によって新しい市場の形成や需要の拡大につながったという実感はない」という。各社の反応からすると、羽田国際化が海外旅行需要の起爆剤までにはなっていないようだ。
人気の昼間アジア線とシンガポール線

同様に、SQ航空券を扱っているOTAの奥泉氏も、「デンパサール、プーケットなどリゾート路線に乗り継げるので、SQ羽田便はレジャーにはメリット」と話す。同社では、羽田便が加わったことで、昨年11月と12月のSQの扱いが前年比30%増、羽田就航による成田便への影響も数字的にはないという。また、エバー航空(BR)の台北(松山空港)線も好調のようだ。クロノスのBR取扱件数のうち、同便のシェアは50%にも及ぶ(2010年12月22日取材時点)。

他のアジア路線も、想定以上の需要拡大とはいかないまでも、ある程度の手応えは感じているようだ。マレーシア航空(MH)のコタキナバル線について、クロノスの加本氏は、「就航地がレジャーデスティネーションであるため、販売層が決まってくるものの、そのシェアはMH取扱件数のうち10%(2010年12月22日取材)」と明かす。キャセイパシフィック航空(CX)の香港線は「前年と同じ水準」とOTAの奥泉氏。NTSの篠原氏は「既存路線の韓国線の販売が伸びている」と話す。
また、日系航空会社の扱いが多いトッパントラベルサービスの航空券ホールセラー部門ベルツアーズは、「近距離路線では羽田利用が増えている」との見解を示す。同じく日系航空会社の航空券をメインに扱うマイパックも「業務渡航で韓国、中国、台湾の反応がいい。ロングは不評」と回答。昼間時間帯に飛ぶ近距離路線のメリットは市場に受け入れられているようだ。
業務渡航の利用増は不透明

また、クロノスの徳山氏は「航空会社の多くが当初は業務渡航がメインターゲットと言っていたが、飛び始めるとレジャーの需要も多いという航空会社も出てきた」と話す。OTAの奥泉氏はSQの羽田便について「昼間の時間帯なら、業務渡航のメリットを出せるだろうが、深夜便では難しいのでは」と疑問を呈する一方、「企業のインセンティブからの反応はいい」という。同様に、ベルツアーズも深夜早朝便に関しては、「ステータスの高い客層には不人気」とするものの、「サラリーマンやOL層の安・近・短デスティネーションへの週末レジャーは増えているのではないか」との感触だ。
今後、北米キャリアが羽田便を深夜早朝時間帯で就航させる。デスティネーションを見ると、ニューヨーク、デトロイト、ロサンゼルスなどビジネス需要が見込まれる都市が多い。深夜便のマーケットがどう動くのか。注目されるところだ。
取材:山田友樹