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取材ノート:ジャカルタ線3社競合下でのガルーダ・インドネシア航空の方針

  • 2010年12月15日
 9月1日にガルーダ・インドネシア航空(GA)が成田/ジャカルタ線を就航させ、来年1月7日からは全日空(NH)が成田/ジャカルタ線を復活させる。同路線へは日本航空(JL)も含め3社が就航し、1日3便が首都間を結ぶことになるが、インドネシアのナショナルフラッグキャリアであるGAは競合他社との差別化をどうはかっていくのだろうか。
                                  
                                  

               
成田/ジャカルタ間は3社計で1日3便に

 去る9月1日、成田/ジャカルタを直接結ぶGA885便が就航した。これまでジャカルタまでの直行便を運航するのはJLのみで、GAではバリ島のデンパサールを経由してジャカルタまで飛ぶ経由便だけの運航であった。

 さらにNHが2011年1月7日から、ジャカルタへの直行便を復便。成田/ジャカルタ間の運航便数がデイリーで一気に倍増することになる。反面、JLはこれまであったデンパサール線から撤退しており、日本とバリ島を直接結ぶのはGAのみとなった。各社がジャカルタ線をここまで重要視するのはなぜだろうか。

 GAの日本・韓国・中国・アメリカ地区総支配人のファイク・ファーミ氏によれば、「以前はバリ島だけをフォーカスしてきたが、バリ島ではリゾート客以外のセグメントを探るのが難しい。反面、ジャカルタ線ならばさまざまな展開が可能」だからだ。デンパサールからの乗り継ぎは限られているが、ジャカルタからならばスラバヤやジョグジャカルタはもちろん、インドネシア内のどの都市へも乗り継ぎが1回で済む。ジャカルタを経由して東南アジアの国々や中東、オセアニア、ヨーロッパへも乗り継ぐことができ、インドネシアからほかの国へ出ることも可能だ。


独自のサービスでGAが先手

 とはいえ、バリ島が今でもインドネシアで最も人気のデスティネーションであることに変わりはない。1月にジャカルタ線を就航するNHは1月から3月末まで、バリ旅行のキャンペーン価格を打ち出しているし、実際のところGAのジャカルタ線にもバリ島への乗り継ぎ客が少なくない。GAのジャカルタ経由バリ島の需要は3割にのぼっており、直行便より料金の安い経由便を選ぶ旅行者がいるのも現実だ。そこでGAは、さまざまな点でサービス向上に取り組んでいる。

 そのひとつが、今年2月から日本路線に導入された機内入国審査。成田、関西発インドネシア行きのすべての便に入国審査官を搭乗させ、機内で入国審査を行なうサービスだ。デンパサール線、ジャカルタ線ともに日本からの便が到着する時刻にはオーストラリアやほかのアジア方面からの便も到着するため、入国審査だけで1時間ほど待たされることが常態化していた。これを緩和するための措置で、現地到着後の貴重な時間を節約できるとあって、大きな利点となっている。特にビジネス客にとってはこの違いは大きい。

 乗り継ぎのスムーズさも考慮し、ジャカルタでの乗り継ぎの際、空港内に係員を配置して乗客を誘導するという。受託手荷物は税関検査のため一度ピックアップする必要があるが、その際も係員によるサポートがある。今後は日本語による乗り換え案内のサインを、早々に設置する予定だ。

 また、今年2月には機材の内装を一新。座席や壁の色を変えただけでなく、エコノミークラスにも個別スクリーンを設置して、エンターテイメントをオンデマンドに変更した。4月には機内食にインドネシア料理のチョイスが登場し、9月には日本からのすべての便に日本人クルーが乗務して、日本語によるサービスを開始している。


インバウンドにも拍車、ビジネスチャンスの可能性

 GAのジャカルタ線にはもうひとつの“使命”がある。それはインドネシアから日本へのアウトバウンドだ。現在好景気に沸くインドネシアでは海外旅行が一般的な年間行事として定着しつつあり、需要も高まっている。

 とはいえ、GAの渡航者のうち、日本へのフライトを利用したインドネシア人は全体の約3%(約6万人)にとどまっているという。ただし、日本へのアウトバウンドを専門に扱う旅行業者がないなか、インドネシアの若者が日本で開催される日本人アイドルのコンサートのためだけに渡航するケースも見られるといい、日本への興味が高まっていることは間違いない。日本に関する情報はまだ多くはないが、GAではインドネシアのメディアを日本へ招聘するなど、インドネシア国内での日本のピーアールにも積極的に取り組んでいる。「ジャカルタ線はインドネシアと日本のビジネスマンがメインのターゲット層となるが、観光旅行客増もめざしていきたい」とファーミ氏は語り、セグメントの拡大も視野に入れているという。

 というのも、インドネシアの人口のうち10%は富裕層であり、この人口は3000万人にものぼる。ファーミ氏は彼らを取り込むことができれば、大きな飛躍につながることは必至とみており、現在、ヨーロッパやオーストラリアへ送客している旅行会社に日本の魅力をアピールしていくことで、興味を向けたい考えだ。実際、2年ほど前に中部地方を中心に愛知県、静岡県や富山県などのアルペンルートをめぐる研修旅行を実施したところ、その後3ヶ月ほどでインドネシアから約300人の送客があった。「特にラマダン(断食)明けの月はインドネシアのホリデーシーズンなので、重点的にプロモーションすることで手ごたえを感じることができるだろう」という。海外旅行慣れしたインドネシア人には東京と大阪といった“ゴールデンルート”に限らず、より深く日本を楽しむ旅行プランを紹介するのもよさそうだ。

 今回はGAにフューチャーしたが、日系2社も供給が増える路線で展開する上で、何らかの施策を考えているはずだ。旅行会社としては、各航空社の方針、戦略、強みを知り、それを利用しながらさらに一歩進んだビジネスチャンスをものにしたい。


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取材:岩佐史絵