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シンガポール航空、ワイン品評会開催−機内で味わうためのセレクションとは

  • 2008年11月25日
ワイン好きにとって、機内でサーブされるワインは楽しみのひとつ。ビジネスクラスやファーストクラス利用ならチョイスもぐっと広がり、機内で過ごす時間をよりリラックスさせてくれる。しかし、機内は地上と異なり、気圧や湿度の関係から人間の味覚が変わるともいわれている。そんな条件のなかで味わう機内のワインは、どのように選ばれているのだろうか。世界的に著名なワインの専門家が選択するという、シンガポール航空(SQ)のワイン品評会をのぞいた。(文:岩佐史絵)


                              
                              
セレクションは得点式、機内の状況を想定して選出

 「ワイン好きにぜひ、シンガポール航空(SQ)を選んでほしい」と話すのは、SQコマーシャル・サプライ部長のゴ・スイグアン氏。年に春と秋の2回開催されるワイン品評会で、赤、白、シャンパンを含め1200種にもおよぶワインをブラインド・テイスティングして、ベストワインを選んでいるという。

 ワインをテイスティングするのは、世界的に著名な3人のワイン専門家。パリで初めてのワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」を設立した、英国のスティーブン・スパリエ氏、ワイン講師でライターとしても知られるアメリカのカレン・マクニール氏、そしてオーストラリア初の「マスター・オブ・ワイン」に選ばれたマイケル・ヒル・スミス氏を招聘し、それぞれの味覚と意見を戦わせて決める。

 選ばれるのはもちろん、色や香り、味のよさなどのバランスが良いワインだが、ブラインドでテイスティングするため、ときどきまったく無名のワインが選ばれることもあるという。また、一般的に「良いワイン」として知られているものでも、気圧や湿度などがまったく違う機内の環境では味覚が異なるため、機内の提供には不向きなものある。

 「無名のワインは高額を支払って搭乗しているファーストクラスの人々には出さないし、酸味や渋みの強いことが特長のワインも味覚が変わる機内では出せない。そういうことも吟味しつつ、ワインを選定しています」とスミス氏。

 ずらりと並べられたワインボトルの前に、小さなブランデーグラスが置かれ、そこにワインを注ぐ。口に含んだら、飲み込まずに香りや味をチェックしていく。番号だけをふったワインリストに点数を書き入れ、得点が高いものを残していく得点式だ。テイスティングにワイングラスを使用しないのは、機内で使われるグラスがワイングラスよりも小さめであるため。少しでも機内と同じ状況を再現するという意図がある。1人が左端の角からテイスティングをはじめればもう1人は真ん中、あとの1人は右端の角から、というように別の場所から試飲していくのも、時間の経過や味覚の変化などに対応するためだ。必ずしもベストな状況ではない機内で、最大限にワインを楽しむために慎重に審査されているのだ。


ワインを迷う楽しみ、クルーにもぜひ質問を

 こうして選ばれたワインは、ファーストクラスではシャンパン2種、赤7種、白5種。ビジネスクラスではシャンパン1種、赤白とも5種ずつで、エコノミークラスは赤白各1種類ずつ。路線によってサーブされる機内食も異なるが、さまざまな料理に合わせやすいワインが選ばれている。

 マクニール氏によると、「広東料理に白ワインとか、お寿司に赤ワインといったように、ちょっと意外な組み合わせでもベストマッチになることもある」とのこと。SQの客室乗務員は全員、搭載されるワインについて講習を受けている。ワイン選びに迷ったらどのワインがベストチョイスか聞いてみるといいだろう。しかも全クルーのうち、50名がソムリエの資格を持っている。

 搭載されるワインの種類は2ヶ月から3ヶ月ごとに変えられるそうだが、もちろん品評会の常連もあるし、何度も選ばれる逸品もある。普段から好んでいるワインがなくても、地上とは環境が違うからこそ、新発見のおいしさというのもあるはずだ。ぜひ、いろいろ試して……といいたいところだが、湿度4%の機内では脱水症状を起こしやすいうえ、アルコールは脱水症状を加速する原因になるため、あまりたくさん飲まないほうがいいそう。「食前にシャンパン、食事中に1杯から2杯くらいがちょうどいいのでは。私は機内ではワインよりも水を多く飲んでいますよ」とのスミス氏のアドバイスも参考にしたい。