中国震災復興視察団、漢中市は三国志はじめ魅力アピールと送客を期待

  • 2008年8月28日
(漢中市:記者 松本裕一) 日本旅行業協会(JATA)と中国国家観光局が主催する中国震災復興支援研修団は8月27日、陝西省漢中市を視察し、市政府と会談した。漢中市は陝西省南西部に位置し、諸葛孔明の墓など三国志にまつわる史跡をはじめ、朱鷺の保護センターなどの観光スポットが多い。会談で中国共産党漢中市委員会常務委員・漢中市副市長の劉克智氏は、「地震の影響は四川省に隣接する一部地域に限定されており、観光スポットや宿泊施設など旅行に関係するインフラへの影響は皆無。漢中が安全で、新しいデスティネーションとして魅力を消費者に伝え、送客して頂きたい」と強調、現在の日本人旅行者は少ないものの、今後の増加に期待を示した。

 これに対し、研修団副団長のびゅうトラベルサービス代表取締役社長の佐藤勉氏は、「視察団、日本の旅行業界の人々は心の底から激励したいと考えている。今年の落ち込みは一過性のもので、これを乗り越え400万人に近い日本人旅行者数が大きく伸びるようにしたい。特に漢中では、三国志をはじめ古い歴史があり、魅力を伝え、多くの日本人が訪れるようにしたい」と返答。また、同じく副団長のANAセールス取締役会長の北林克比古氏も「漢中の周知と商品造成など、日本人旅行者が訪れるよう努力をしていきたい」と語った。

 漢中は、中国国内旅行者を中心に2007年は732万人の観光客を受け入れた。外国人は1万1000人で、このうち日本人は2800人と外国人旅行者の中では最も多い。観光客数は地震後に落ち込んだものの、現在はホテル価格や観光施設見学料の割引などの諸施策を講じており、前年比8割に回復している。10月までに例年並みに戻し、通年では約16%増となる850万人を目指すという。


▽「三国志」をテーマに受け入れ体制を拡充へ

 漢中には、劉邦が紀元前206年に漢王朝を打ち立てた土地であるほか、諸葛孔明の墓や孔明を祀った「武候祠」など三国志関連の史跡、紙を発明した蔡倫の墓など歴史的な観光スポットが多い。2007年10月に長安との高速道路が開通し、長安から3時間程度で移動することができるようになった。これを活用し、三国志をテーマに長安と組み合わせた旅程や、成都を含めた「完全な三国志コース」(劉氏)を打ち出したい考え。また、朱鷺の保護センターでは、より間近に朱鷺を観察できるプログラムを検討中だ。

 研修団メンバーからは、視察で巡る範囲に地震の影響はなく、三国志のファンに対する新しいデスティネーションとして有望という意見がある。これまで外国人旅行者が多くなかったことから、ホテルの質や数の向上を望む声も強いが、「内陸部の他都市に比べれば充分なレベル。街自体もきれい」と肯定的な声もある。劉氏は、「まずは内外の投資によって、既存施設のグレードアップに取り組む。現時点で5軒が改装に着手、あるいは終了しており、1軒は新築で完成済み」と説明。諸葛孔明の墓をはじめ、日本語の案内も掲示されており、受け入れ体制の整備を継続して進める。