JL西松社長、再建好調で「これからスタート」−首都圏空港拡張を視野に

  • 2008年3月3日
 日本航空(JL)は、羽田と成田の両空港の再拡張にむけた安定的な成長軌道を確立することをめざし、新たに「2008-2010年度JALグループ再生中期プラン」を策定した。昨年2月から、燃費効率の良い機材導入や機材のダウンサイジング、プレミアム戦略、人件費の削減を柱とする「2007-2010年度再生中期プラン」を進め、今年度は営業利益が当初計画の350億円を上回る見込み。新プランは、こうした施策をさらに推し進め、燃油価格のさらなる高騰や競争激化など経営環境の変化に対応しつつ、2007年のプランを80億円上回る2010年、960億円の営業利益の達成をめざす。

 また、2月29日に開催した取締役会で、5社の金融機関を含む14社に対して第三者割当による優先株主の発行を決議し、手取り概算で合計1515億円の資本を増強する。これにより、財務体質の強化と機材戦略を推進する。日本航空代表取締役社長の西松遙氏は2月29日の会見で、「業績は回復基調にある」とし、再建が着実に進んでいると言及。「ようやくマイナスをリセットできた。これからスタートで、様々な手を打てるようになる」と、積極的な展開を進める考えを示した。

 その一方、燃油費の高騰やサブプライム問題による景気悪化などに触れ、「先行きはまだまだ楽観できる状況にない。一層の収益性改善が必要」と強調する。そのために、「首都圏空港の再拡張という大きなビジネスチャンスを逃さず、9.11やSARSなどにも耐えうる経営体制づくりのため、資本増強が必要だった」と説明。新プランは、営業利益の目標以外に、経常利益は740億円(前プラン:580億円)に積み増し、営業キャッシュフローは、4年間で累計7360億円(7110億円)をめざす。また、自己資本比率は30.0%(19.0%)を目標とする。


▽燃油高騰で機材戦略が重要に−小型機導入で路線維持し支持獲得めざす

 目標達成の方法として西松氏は、「燃油価格が高騰する現在、機材戦略が非常に重要」とし、燃費効率の良い新機材への更新と、ダウンサイジングを加速する考えを語った。国際線用機材の割合では、大型機を2007年度末時点の52%から2010年度末には38%に比率を減らすが、中型機は44%から50%、小型機は5%から12%へとそれぞれ増やしていく。なお、省燃費機の比率は、20%から50%に高まる。増資により得る見込みの1515億円のうち、1015億円は航空機材の調達に充て、500億円はウェブサイトの機能向上、国際線プレミアムエコノミーと国内線ファーストクラスの拡大、空港ラウンジリニューアルなど設備投資とIT投資に充当する。

 また、グループ航空会社を活用したコスト圧縮も進める。国際線の運航便数に占めるジャルウェイズ(JO)とジャルエクスプレス(JC)の割合は、2010年度末には現在の1週間あたり25%から38%へ高め、国内線もJCとジェイ・エアの運航比率を、1日あたり25%から41%まで引き上げる。会社別では、JOは国際線の観光路線とアジアのビジネス路線を拡充し、JCは国内線の小型機を利用した全国規模の展開に加え、09年度からボーイングB737-800型機を使用し、中国を中心に国際線を運航する。

 2010年の首都圏枠拡大に向け、国際旅客事業では高収益、成長路線への経営資源の集中を進め、ボーイングB787型機により業務需要市場を新たに開拓する。また、羽田空港では近距離国際線の増強と深夜早朝時間帯チャーターを増便、成田空港では、アジアやロシアなどビジネス需要の高い路線のネットワークを拡大する。その上で、「国内の地方路線も含めて、利用者にとっては『便が飛んでいる』ことが最も大事。リージョナルジェットを使用して、今までは採算が取れなかった路線も維持、拡充したい」とした。


▽「2008-2010年度JALグループ再生中期プラン」連結業績目標
(年度/営業収益/国際線旅客営業収益/国内旅客営業収益/営業利益/経常利益/当期利益)
2008年度/2兆1840億円/8070億円/7040億円/500億円/300億円/130億円
2009年度/2兆2050億円/8150億円/7300億円/750億円/530億円/260億円
2010年度/2兆2600億円/8530億円/7360億円/960億円/740億円/530億円

▽業績目標前提座席供給量
(年度/国際線有効座席キロ/国内線有効座席キロ※前年度比)
2008年度/4.1%減/1.9%減
2009年度/3.4%減/0.9%減
2010年度/5.7%増/0.7%減
※シンガポール・ケロシン市場価格は110米ドル/1バレル、為替は1米ドル/110円の前提

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