IATAビジニャーニ氏、「靴は脱ぐ?脱がない?」−セキュリティは各国統一を

  • 2008年2月15日
 国際航空運送協会(IATA)事務総長兼CEOのジョバーニ・ビジニャーニ氏が来日、日本が進めるアジア・ゲートウェイ、指紋採取による入国管理、環境など、アジア・太平洋地域で積極的なリーダーシップを発揮するよう促した。在日米国商工会議所(ACCJ)、欧州ビジネス協会(EBC)、在日オーストラリア・ニュージーランド商工会議所(ANZCCJ)が共催した講演会で語った。

 このうち、各国の入国、出国手続きについてセキュリティの確保という観点から重要であるとの考えだが、各空港で独自の方法を採用していることに疑問を呈した。解決策としては、各国政府が相互に基準を承認し、統一的な対応をする必要があるとの考え。特に、「靴は脱ぐのか脱がないのか」、「パソコンはかばんの中で良いか、取り出すのか」、「コートとベルトはどうするのか」など、空港毎に異なる対応では利用者が信頼できないとした。このセキュリティの確保にともなう煩雑さ、その一方で旅客の快適性を確保する効率性のバランスが重要とし、技術を活用し、互換性を担保することが不可欠という。14日には法務省の高官と会談し、ビジニャーニ氏みずから成田空港での体験を踏まえ、アジア各国への同様の技術導入でリーダーシップを発揮するよう促したという。

 また、安全性の確保という観点で政府が指紋採取を必要とするならば、政府との合意に基づきチェックイン手続き、搭乗券管理などCUSS(Common Use Selfservice Check-in System:自動チェックインシステム)を活用していく案もあると言及した。


▽規制を取り除き自由化を−国境を越えたM&Aを

 アジア・ゲートウェイ構想については、航空産業が二国間協定に基づいたビジネスを進めている規制産業からの脱却の第一歩という位置づけで、「良い方向に向いている」と評価。こうした自由化の中で、政府内で議論されている空港の外資規制等については、「空港の所有権は誰であっても良い」としつつ、「航空会社が規制で脆弱な産業となっており、国境を越えたM&Aで他産業と同様にグローバルな資本にアクセスできる環境」が望ましいとの考えを示し、日本の航空会社についても同様であるとの考えだ。ただし、空港の民営化については、近年は空港が高い利益を確保しているとし、EBITA(*注)率はオークランドが54%、シドニー50%、香港60%、ソウル43%などの例を挙げ、他産業の大企業で20%から30%、航空会社は3%から10%と比べ、投資価値が高いことを指摘。ただし、一方では独占的な企業であることから、「利用者である航空会社や旅客、株主が利益を享受できるかたち」が望ましいとの考えも示した。


(*注)EBITA:Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization:税引前当期純利益、支払利息、減価償却費の加算額:資本に対し、どの程度のキャッシュフローを産みだしたか示す利益の概念。国際的には国別の会計基準、金利、税率などを最小限にして比較する指標としても用いられている