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スペシャリスト・インタビュー クラブツーリズム 井上敦也さん

今後のパッケージツアーは目的とこだわりのバランスが鍵に

クラブツーリズムの関西海外旅行センター欧州チームでは、ヨーロッパ全般の国々の主要なツアーを担当。今回ご登場いただく井上さんは、2年前に同部署に異動したそうです。それ以降、一貫してヨーロッパ方面のツアー企画に携わっていますが、近年の傾向について「目的志向のニーズに応えるツアーが必要だが、パッケージにはこだわりのバランスが重要」と考えているようです。お話を聞きました。

クラブツーリズム株式会社
関西海外旅行センター 欧州チーム
井上 敦也(いのうえ あつや)さん

 2005年度(第2回)デスティネーション・スペシャリスト スカンジナビア認定


Q.DSを受講したきっかけと、感想を教えてください

海外旅行センターに異動した年、初めて北欧4ヶ国を対象にしたFAMツアーに参加しました。そこでスカンジナビア政府観光局の宮本氏にDSのことを教えていただき、受けてみようと思ったのです。

実際は養成講座のドリルを勉強する時間がなかなかとれませんでしたが、試験は講座の内容がほとんどなので、資格取得のみを目指すならドリルだけ押さえれば充分です。所属部署で担当するツアーは定番の周遊旅行が多いため、実際の業務では著名な観光地やホテルなどを組み込むだけでも間に合いましたが、養成講座を学ぶことで歴史やそれぞれの関わりを知ることができ、役立ちました。

Q.FAMツアーで現地を見た感想は

7月のベストシーズンを体験するという主旨で、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランドの各首都を中心とした8日間の定番コースを周遊しました。さすがに景色は美しく、気候は快適。ヨーロッパは都市の近郊に自然が広がる場所が多いですが、北欧は特にそれが顕著で、環境は群を抜くものがあると思いました。その1ヶ月後の8月末に添乗で同じコースを回ったのですが、そのときは景色に変化はありませんでしたが、既に初秋で肌寒かった。北欧のベストシーズンの価値を感じましたね。

実際に現地に行くと、その場への思い入れが強まるのは確かです。分かりやすく、企画や手配も早く済む。ガイドブックだけでは分からない雰囲気もあるので、企画担当者としては現地を見ることは大切だと思います。

Q.スカンジナビア方面のツアーの特徴はありますか

日本より物価がかなり高く、北欧はヨーロッパの中でも特に高額商品になります。弊社の主要客層は熟年・シニアなので、高額商品に似合うプロダクトを厳選し組み込みよう心がけています。例えばホテルはブランドやサービス面だけでなく、朝夕のフリー時間に自分で散策できるような立地条件の良さなど、値段に見合う価値が重要だと思います。

Q.最近見られる、スカンジナビア旅行の傾向は

リピーターが増え、新方面として従来のフィヨルドや都市観光などから、ノルウェーの北部のヨーロッパ最北端と言われるノールカップなど北部が注目されています。しかも以前は周遊型のため、駆け足で巡ることが多かったので、2回目以降はゆっくりと回る旅行を選ぶ傾向になっています。また、日本で注目される北欧家具やインテリアなど、まだまだスカンジナビアの素材がありますので、そのような新しい素材を組み込んだツアーを作りたいと思っているところです。

Q.ご自身が担当された中で、特に印象的だった企画はありますか

別方面ですが、トルコのカッパドキアでウォーキングの時間を1時間半ほど組み込みこんだことがあります。トルコ・ツアーは周遊型で駆け足観光が多いのですが、現地を自分の足で歩きながら見られるのが好評でした。もともと現地のオペレーターさんに勧められたのがきっかけですが、普段から熟年・シニアの方々が昼も夜もウォーキングを楽しむ光景を見ていたので、ウォーキングは人気があり、体力的にも大丈夫と思って企画化したのです。

私は今後、このような目的志向のツアーが重要になると思います。現在の観光のみをハイライトに勝負していては、旅行市場は広がりません。特に近年は旅行に趣味や目的を求める人が増えており、ニーズを満たす的確なツアーを提供できれば、市場の裾野は必ず広がると思います。そのため、メディアなどでトレンドをキャッチし、さらに現地に詳しい方のアドバイスをいただきながら、商品に反映させることが大切です。ただし、あまりに内容をこだわりすぎるとパッケージではなくFIT向けになり、逆に対象を狭めます。パッケージツアーには、そのバランスが大切なんだと思います。

ありがとうございました。


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