法律豆知識(112)、航空私法入門(3)−死傷事故の損害賠償
前回の説明で、モントリオール条約によれば、約1600万円(10万SDR)までは、厳格責任となり、航空会社は無過失責任を問われることになるが、約1600万円を超えると、過失が推定されるだけで無過失責任ではない。しかし、その代わり、賠償額の上限がないことが判ってもらえたと思う。
過失が推定される場合、すなわち、約1600万円を超える部分については、航空会社は自らに故意、過失がないこと、または、専ら第三者の故意、過失によって生じたことを立証できた時に限って責任を免れることになる(条約21条)。
とはいえ、それまでのヘーグ議定書で、上限が25万金フラン(約265万円)に制限されていたことからすれば、大幅な改革である。
<すべての事故が対象ではない>
前々回(第110回)で説明したが、モントリオール条約は国内航空には適用されない。したがって、国内航空は、原則として航空会社の約款に従うことになるが、発展途上国の場合、ヘーグ議定書レベル、つまり200万円から300万円が上限ということもありうる。
もっとも、約款の効力には法律上多くの問題があり、訴訟を起こせばより多くの金額を支払わせる余地があるが、その際、その会社が日本国内に営業所を持っていないと、外国で訴訟を起こさざるをえない。しかし、そのための時間とエネルギーは大変である。結局「泣き寝入り」と言うことになりかねない。
その場合には、そのようなリスクの大きい航空会社を手配した旅行業者の責任が問われかねないので注意を要する。もっとも、国内線から国際線へ乗り継ぐ時の国内線は国際線扱いで、モントリオール条約が適用される。したがって、乗り継ぎでない、国内の往復旅行などが注意を要することになる。
<条約の適用範囲>
モントリオール条約は、出発地と到着地が締約国であれば、予定寄港地が非締約国であっても適用されることになっている。その際、旅客や利用航空会社の国籍は関係ない。
従って、日本から締約国への旅行は、非締約国を経由しても適用される。また、日本出発で非締約国に旅行しても、往復の運送契約をし、日本を到着地として戻ってくれば適用されることになる。
しかし、非締約の発展途上国に駐在している者が、国内旅行をした場合は勿論、外国へ旅行をした場合には、片道でも、往復でも、モントリオール条約の適用はない。従って、非締約国に駐在し、同国から日本に一時帰京した時も、モントリオール条約は適用されないので注意を要する。
ところで、現在でも、モントリオール条約に加入していない国も多い。モントリオール条約の加入国は、インターネットでも検索できるので、関係国の加入状況はチェックしておくことをおすすめする。
<管轄>
旅行者としては、事故にあたった場合、仮にモントリオール条約が適用されることになっても、自己の居住地で訴訟を起こせないと、損害賠償請求は事実上困難である。
管轄に関するモントリオール条約33条をまとめると、自ら、主なかつ恒常的な居住(principal and permanent residence)を有している領域から、当の運送人がそこから発着する運送業務を行っている場合には、その運送人に対して訴訟を起こせる。
日本に住所を有しておれば、日本人でも外国人でも、例えば、日本から出発する往復旅行を計画して、途中で航空機事故により死傷事故が起きた場合、その航空機が非締約国の国籍でも、モントリオール条約が適用されるとともに、訴訟も日本で起こせるわけである。
※次回はフライトの遅延(delay) と手荷物の紛失・損傷の問題を検証しよう。
過失が推定される場合、すなわち、約1600万円を超える部分については、航空会社は自らに故意、過失がないこと、または、専ら第三者の故意、過失によって生じたことを立証できた時に限って責任を免れることになる(条約21条)。
とはいえ、それまでのヘーグ議定書で、上限が25万金フラン(約265万円)に制限されていたことからすれば、大幅な改革である。
<すべての事故が対象ではない>
前々回(第110回)で説明したが、モントリオール条約は国内航空には適用されない。したがって、国内航空は、原則として航空会社の約款に従うことになるが、発展途上国の場合、ヘーグ議定書レベル、つまり200万円から300万円が上限ということもありうる。
もっとも、約款の効力には法律上多くの問題があり、訴訟を起こせばより多くの金額を支払わせる余地があるが、その際、その会社が日本国内に営業所を持っていないと、外国で訴訟を起こさざるをえない。しかし、そのための時間とエネルギーは大変である。結局「泣き寝入り」と言うことになりかねない。
その場合には、そのようなリスクの大きい航空会社を手配した旅行業者の責任が問われかねないので注意を要する。もっとも、国内線から国際線へ乗り継ぐ時の国内線は国際線扱いで、モントリオール条約が適用される。したがって、乗り継ぎでない、国内の往復旅行などが注意を要することになる。
<条約の適用範囲>
モントリオール条約は、出発地と到着地が締約国であれば、予定寄港地が非締約国であっても適用されることになっている。その際、旅客や利用航空会社の国籍は関係ない。
従って、日本から締約国への旅行は、非締約国を経由しても適用される。また、日本出発で非締約国に旅行しても、往復の運送契約をし、日本を到着地として戻ってくれば適用されることになる。
しかし、非締約の発展途上国に駐在している者が、国内旅行をした場合は勿論、外国へ旅行をした場合には、片道でも、往復でも、モントリオール条約の適用はない。従って、非締約国に駐在し、同国から日本に一時帰京した時も、モントリオール条約は適用されないので注意を要する。
ところで、現在でも、モントリオール条約に加入していない国も多い。モントリオール条約の加入国は、インターネットでも検索できるので、関係国の加入状況はチェックしておくことをおすすめする。
<管轄>
旅行者としては、事故にあたった場合、仮にモントリオール条約が適用されることになっても、自己の居住地で訴訟を起こせないと、損害賠償請求は事実上困難である。
管轄に関するモントリオール条約33条をまとめると、自ら、主なかつ恒常的な居住(principal and permanent residence)を有している領域から、当の運送人がそこから発着する運送業務を行っている場合には、その運送人に対して訴訟を起こせる。
日本に住所を有しておれば、日本人でも外国人でも、例えば、日本から出発する往復旅行を計画して、途中で航空機事故により死傷事故が起きた場合、その航空機が非締約国の国籍でも、モントリオール条約が適用されるとともに、訴訟も日本で起こせるわけである。
※次回はフライトの遅延(delay) と手荷物の紛失・損傷の問題を検証しよう。