2007年出国者数は1790万人−財・日本交通公社予測

  • 2006年12月25日
 財団法人日本交通公社(JTBF)は22日、第16回旅行動向シンポジウムにおいて、2007年の日本人出国者数の予測を1790万人と発表した。JTBF主任研究員の黒須氏は、「昨年のこの席上で同じ数字を予測しており、やや弱気」とも発言したが、予測通りであれば、1800万人を超えないものの、2000年の過去最高に並ぶ見込みを示した。「弱気」の想定は出国率が0.2ポイント増の14.2%であった場合で、0.1ポイント上ぶれした場合には、1800万人の大台に乗る。

 この予測の背景には2006年の旅行者動向で懸念材料があることから。出国者数は僅かながら1月から10月で伸び率は上向きであるものの、出国率は10月までの過去12ヶ月間で30代女性、50代女性が落ち込んでいる。「この(30代女性、50代女性)層の回復がないと、(出国者数の)伸びが足踏み」しており、女性層の出国率減の要因は「分からない」が、しばらくこの層の推移が注視される。

 また、デスティネーション別での出国者数は中国、香港、ベトナム、マカオ、台湾の伸びが貢献。逆に増加の伸びを抑えているのはオーストラリア、サイパン、韓国、ハワイ、アメリカ本土。出国率の増加はしているものの、デスティネーション毎に好不調が色分けされつつあるのが現状だ。


▽旅行と文化・エンターテイメントの関連深め、需要創造を

 統計上のデータに加え、増加の好不調を色分けする目安ともなるのが、航空座席の供給量。韓国については、日本のインバウンドとの関連もあり例外と考えると、オーストラリア、サイパン、ハワイ、アメリカ本土は供給量の減少、伸び悩みを抱えるデスティネーション。サイパン、ハワイはこれまで日本の旅行市場の拡大を支えてきたデスティネーションであり、アメリカについても概ね同じことが言え、構造的な変化に伴う移行過程と捉え、対応策を練る必要がある。

 加えて、構造的な変化への対応は国内旅行を含め、旅行消費額の多くが宿泊費、交通費で割合を占めていることを変えていく必要がある。JTBFは日本の2005年のデータとして宿泊費が31%、交通費が41%と示したが、アメリカでは宿泊費が20%、交通費は37%だ。また、ヨーロッパでは格安航空会社の登場で、交通費の割合が下がっていると見られている。宿泊・交通費の割合が日本より低いアメリカでは文化・エンターテイメント費が16%と日本の7%とは大きく異なる。今後は日本でも市場が成熟化したというものの、文化・エンターテイメントを中心とした消費が旅行と関係性が深まることで、新たな旅行需要が開けてくる可能性がある。こうした観点から、「楽しむ」旅行を打ち出したパッケージ商品の登場が期待される。