最近の相談事例から(2):「ダブルベッド」のトラブル〜法律豆知識(74)

  • 2005年12月24日
 前回に引き続き、最近の相談事例としてベトナムツアー関連のケースであるが、ダブルベッドのトラブルでも相談を受けたことがある。ベトナムの場合、地方へ行くとダブルベッドが多いようだ。今回は、2人部屋として割り当てられたら、ダブルベッドであったため、「これでは寝れない」とトラブルになったケースを紹介しよう。

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▽ダブルベッド
 友人同士でも、ダブルベッドというのは困る。殊に、男性同士では、床に寝た方が良いということになる。兄弟なら良いではないかと考える旅行業者も見受けられるが、仲の良い姉妹ならともかく、一般的には敬遠される。
 日本旅行業協会(JATA)の「旅行広告作成ガイドライン」では、ダブルベッドを割り当てて良いとしている事例は、夫婦、またはハネムーンカップルだけということになっている。それを前提に、ダブルベッドになることが予想されている時には、ガイドラインで「夫婦又はハネムーンカップルで参加の場合は、ダブルベッドの部屋になる場合があります」と表示することを求めている。
 いずれにしても、旅行先で、夫婦でもハネムーンカップルでもないのに、ダブルベッドの部屋しか割り当てられないと事態は最も避けるべきなのである。事前調査を十分しておく必要があるのは当然である。本件のようなトラブルは、典型的に旅行業者の責任になるので、注意して欲しなければならない典型的な事例である。

▽シングルルームと追加料金
 古典的なトラブルで後を絶たないものとして、旅行者が2人部屋で良いと思って旅行に参加している場合、現地でシングルルームを割り当てられ、追加料金の請求を受けるというケースがある。
 このようなケースで、広告ないし契約書面で、「1名、3名、5名のように奇数人員で参加申し込みの場合は、部屋割りの都合で、シングルルームの料金を負担していただく場合があります」としておくと、良いのであろうか。
 予告しているのだから、追加料金を徴収してもいいではないかと言う議論もあろう。しかし、ガイドラインは、これを不適切な内容としている。
 1人部屋を希望していないのに、1人部屋の料金を強制することになるので適当でないという訳であろう。
 旅行業者としては、旅行代金を2人1室として設定しているのに、部屋割りの関係で1人部屋が出るとコスト増になる。どうしても、割増料金を請求したくなる。この気持ちも良く理解できる。とはいえ、旅行業界の健全な発展という観点から、可能性を予告していても、1人部屋を希望しない旅行者に追加料金を請求するのは望ましくないと言うのがガイドラインの考えである。消費者としての旅行者の保護という観点からは、やむをえないといえよう。

 これらの問題を解決する方法として、ガイドラインは、「この旅行では、他のお客様との相部屋の取り扱いはいたしておりません。従って、1名、3名、5名のように奇数人数でお申し込みのお客様は、どなたかお1人については、お1人部屋のご利用となります。なお、この場合の旅行代金は○○○○円になります」と記載する事を提案している。
 これは、常に参加グループ毎に割り振り、他のグループの人と相部屋にはしない。その代わり、そのグループには常に1人分の追加料金が付加されるわけである。判りやすく合理的な解決方法であろう。
 しかし、奇数の参加者は常に1人分の追加料金が必要で、1名参加や3名参加者は割高になる。他のグループと相部屋でもいいから旅行料金が安い方がいいという旅行者を閉め出す危険もある。

 他方、旅行業者としては、他のお客との相部屋になるのでも構わないという旅行者を募集し、その代わり部屋割りの結果1人部屋が出来ても追加料金を徴収しないこととする選択肢もある。これなら、旅行者の募集は楽であろう。
いずれを選択するかは、営業政策の問題となろう。

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執筆:金子博人弁護士[国際旅行法学会(IFTTA)理事、東京弁護士会所属]
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