法律豆知識、旅行契約の取り消しにおけるトラブル防止のポイント

  • 2005年6月24日
▽取消料のトラブルの頻発
 旅行者と旅行業者とのトラブルで、最も多いタイプの一つが、申込金支払い前の取消料のトラブルである。旅行者が一旦パックツアーや手配の申し込みをしたが、申込金の支払いをしないうちに、「やっぱりやめます」と申し出たときに、旅行業者が取消料を請求してしまうというケースである。
 日本の民法の原則では、契約書を作成していなくても合意に達すれば、口頭でも契約は成立するというのが原則である。そのため、一般の取引社会でも契約が成立したかどうかで、トラブルになることは多い。
 旅行契約の場合もそのようなトラブルが発生しやすい分野なため、旅行契約約款で、申込金の支払いという極めて判りやすい基準で、契約の成立を仕切っている。これは極めて合理的な制度で、これによりトラブルは相当程度防止できるはずである。
 しかし、実際は申込金を受け取っていないのに取消料を請求してしまうことが多く、トラブルになるケースが後を絶たない。取消料は、あくまでも契約成立後のキャンセルの場合であり、契約が成立していなければ、発生する事はないので厳重に注意されたい。

▽契約成立時期の確認
 企画旅行契約の成立は、募集型、受注型いずれも、旅行者が所定の申込書の提出とともに申込金を支払い、旅行業者が解約締結の承諾をし、申込金を受理したときに成立する。手配旅行においても、旅行業者が、同じく契約締結を承諾して、申込金を受理したときに成立する。
 以上は、旅行契約約款に明記されていることで(募集型約款5、8条。受注型約款6、8、23条。手配約款7、8条)、旅行業にたずさわる者なら、誰でも知っていなければならないものである。
 これが原則で、契約の成立は、「申込金の受理」という極めて判りやすいポイントで決まることになっている。ただし、これには例外がある。インターネットの時は、通信契約であるから、契約を承諾する旨の通知を発したとき(承諾も電子通知の時は、相手に到達したとき)に成立する。
 団体・グループの受注型企画旅行については、申込金の支払いを受けるとなく契約の締結を承諾できる。
 手配旅行の時に限ってであるが、書面による特約があれば、申込金の支払いを受けることなく、契約締結の承諾で契約は成立する。これらの例外も上記の約款に明記されており、これら限られた場面以外は、申込金の支払いで、契約は成立する。逆に言えば、申込金の支払いを受ける前に、キャンスル料を請求することは出来ないのである。

▽予約契約について
 募集型企画旅行契約では、スポーツ観戦が組み込まれているパックツアーなど、予約が殺到するツアーがある。このような予約契約でも、原則通り、申込金の支払をする事で契約成立となる(募集型約款6条)。それまでのキャンスルで、取消料は請求できないので注意されたい(但し、会員制の時は、会員番号の通知で契約成立になる)。