JTB、海外旅行「完全復活」へ “グローバル体験”で新たな需要創出
JTBは8月28日、法人企業向けイベント「JTB Global Experience Forum 企業成長を支える“グローバル体験”の価値」を初開催した。同日開催の「第13回JTB海外旅行EXPO」と連動し、人材育成やスポーツ観戦などを通じて、海外での体験を企業の人材・組織・顧客との関係強化につなげる新たな需要創出の方向性を示した。
JTBは今回、「海外旅行マーケットの完全復活」を掲げた。一方、日本人海外旅行者数は依然としてコロナ前の水準には戻っておらず、同社執行役員の福井貴裕氏はフォーラム冒頭で、業界全体の回復状況について「まだ7割程度」との認識を示した。また、日本人のパスポート保有率が低水準にとどまっていることにも触れ、海外へ出る機会そのものが減少している現状に危機感を示した。
福井氏は海外旅行の意義について、単なる観光や移動だけではなく、海外で新しい価値観や技術、社会の変化に直接触れ、それを日本に持ち帰ることにあると説明する。本誌の取材に対し、「日本の中で考えること」と「世界を見て考えること」の両方を通じて、日本の立ち位置を認識することが重要だとした。
国内の魅力向上も海外旅行回復の壁に
日本市場の回復が世界に比べて遅れている理由について、福井氏は円安などに加え、国内で完結できる体験が充実してきたことも一因との見方を示した。新しいアリーナやエンターテインメント施設などが相次いで登場し、「わざわざ海外に行かなくても日本で済んでしまう」と考える消費者がコロナ後に増えた可能性があるという。
その一方で、世界ではテクノロジーやサステナビリティをはじめとする新たな取り組みが急速に進んでいる。福井氏は自身が視察した米国の「Intuit Dome」を例に、スマートフォンを活用したキャッシュレス・デジタル化された観戦体験や無人タクシーなど、日本ではまだ一般化していないサービスを挙げた。
「世界で起きていることを、しっかり実際に見ていただくことが非常に重要な時期」と福井氏。こうした体験を企業の視察や研修に取り入れ、日本での事業や人材育成につなげることも海外旅行の新しい価値になるとみる。
「旅行の手配屋」から企業課題解決のパートナーへ
今回のフォーラムでJTBが打ち出したもう一つのメッセージが、旅行会社としての役割の変化だ。
福井氏は冒頭、「旅行の手配屋から、企業課題、地域課題を解決するパートナーへ転換を図っていきたい」と説明。旅行を販売すること自体を目的とするのではなく、企業がどのような組織をつくり、どんな課題を解決したいのかを起点に、海外での体験をソリューションとして設計する考えを示した。
この方向性を具体化したのが、フォーラムで紹介された人材育成やスポーツホスピタリティだ。
人材育成では、JTB自身がグローバル人材育成に海外での実践経験を重視している。同社は今年度から、語学力だけでなく海外経験や越境経験を含めて社員のグローバルリテラシーを評価する仕組みを導入。1カ月間の海外OJTや次世代経営人材向けの海外派遣などを実施している。さらに、飲料メーカーの若手育成や大手電機メーカーの海外インターンなど、法人顧客向けにも海外での体験を活用したプログラムを提供している。
インドネシアでは現地のコンサルティング会社などと連携し、企業ごとの課題に応じてフィールドワークを設計。海外で見て、聞き、考え、現地のステークホルダーに提案する実践型の研修も展開している。
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