「人間中心のAI」と「地域の求心力」、Rakuten AI Optimism 2026から考える人口減少時代の観光

  • 2026年8月14日

 AIによる業務効率化が急速に広がる一方、観光産業を取り巻くもう一つの大きな構造変化が人口減少だ。旅行会社や宿泊施設の人手不足だけではない。旅行者を送り出す先である地域そのものが、暮らしやインフラを維持できなくなる可能性がある。

 楽天グループが2026年8月5~7日にパシフィコ横浜で開催した「Rakuten AI Optimism 2026」では、こうした二つの課題を考えるうえで示唆的なセッションが相次いだ。一つは「企業・事業を導くAX(AI Transformation)の視点と戦略―人間中心のAIに向けて」、もう一つが「人口減少時代の地域と観光の未来~『風の谷』という希望から考える~」だ。

 二つの議論から浮かび上がったのは、効率化だけでなく、人が持つ知識や創造性、地域固有の価値をどう生かしていくかという課題だ。AIと人の役割をどう組み合わせ、限られた人材をどこに振り向けるのか。人口減少時代の観光を考える視点が示された。

「人口減少時代の地域と観光の未来~『風の谷』という希望から考える~」のセッション。人口減少下で地域と観光をどう持続させるかが議論された。

「便利なAI」から事業変革へ

 AXをテーマとしたセッションには、LIXIL常務役員CX Functionリーダーの安井卓氏、かんぽ生命保険執行役員の早瀬千善氏、博報堂DYホールディングス執行役員CAIOの森正弥氏が登壇した。

 森氏が冒頭で問題提起したのは、企業の生成AI導入が、社員が日常的に使う「便利なツール」と生産性向上にとどまりがちだという点だ。そこから自社の強みや事業戦略、業務変革、顧客価値の創出へどうつなげるか。2026年の現在地では、そこまで踏み込むことが求められているとの認識を示した。

 キーワードになったのが、「オートメーション」と「オーグメンテーション」だ。

 前者はAIによる自動化・効率化。後者は、AIを使って社員が持つノウハウや暗黙知、能力を拡張する考え方だ。森氏は「AIか人間か」という二者択一ではなく、AIと人間の協働によって、双方の組み合わせから価値を生み出す視点を示した。これは、森氏らが参加する「人間中心のAIコンソーシアム」が掲げる、人間の主体性や創造性を尊重したAI活用とも重なる。

 LIXILの事例は、その具体像を示した。同社はデジタルやAIを専門部署だけのものにせず、現場社員自身が使えるよう「民主化」を進めている。

 例えばコールセンターでは、顧客との会話を踏まえ、次にどのような提案や問い掛けをすべきかをAIがリアルタイムでオペレーターに提示する仕組みを導入している。AIが顧客対応を完全に代替するのではなく、人の対応力を高める役割を担う。

 営業現場でも、商談後に担当者が音声で内容を入力すると、システムに適した形に整理して記録する仕組みを活用している。記録業務そのものを効率化するだけでなく、これまで個々の営業担当者の中に埋もれていた情報を蓄積し、将来はAIが次の提案に利用できるデータへ変えていく考えだ。

AXをテーマとしたセッションには、(左から)博報堂DYホールディングス執行役員CAIOの森正弥氏、LIXIL常務役員CX Functionリーダーの安井卓氏、かんぽ生命保険執行役員の早瀬千善氏が登壇した。

 一方、かんぽ生命の早瀬氏は、AI活用を技術だけの問題として捉えない姿勢を示した。従来の「ビジネス部門が要件を出し、IT部門が作る」という関係を見直し、何のために何をつくるかを両者が一緒に考える体制への転換を進めているという。

 また、早瀬氏は、生命保険業界では従来から、確率・統計を用いて保険料計算などを担う専門職「アクチュアリー」が重要な役割を果たしてきたと紹介したうえで、従来の数理モデルに比べ、機械学習やAIは多数のパラメーターを用いるため、結果を人間が解釈する難しさが大きくなっていると指摘。AIを活用するうえでは、予測精度だけでなく、AIがどのような性質を持ち、導き出した結果を人間がどう理解し、説明責任を果たせるようにするかも重要になるとの考えを示した。こうした観点も、「人間中心のAI」を考えるうえで欠かせない要素の一つだとした。

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