「価値を決めるのはお客様」-BOJ野口貴裕氏が語る、高付加価値旅行の本質
野口 旅行会社の仕事は、宿泊施設やレストラン、ガイド、体験事業者など、多くの方々の協力があって初めて成り立ちます。我々一社だけでは何もできません。だからこそ、それぞれの方々とリスペクトを持って関係を築くことを何よりも大切にしています。
創業当初は実績も知名度もなく、「BOJって誰ですか」と言われることも少なくありませんでした。例えば、ホテルへ問い合わせても、予約を受け付けてもらえないこともありました。そうした経験があるからこそ、信頼関係を築くことの大切さを強く感じています。
また、行政との仕事を始めた当初は、欧米市場への理解が十分ではなく、どうしてもプロダクトアウトの考え方が強いと感じました。「そうではなく、マーケットインで考えるべきです」と伝え続け、ようやくその考え方が少しずつ浸透してきたと感じています。
単に売上を追求するのであれば、団体旅行を数多く取り扱うという考え方もあります。しかし、私たちは質の高いお客様を地方へ送り、現地でしっかり消費していただくことを重視しています。自分たちだけがハッピーになるのではなく、地域の皆さんもハッピーになること。それが私たちのミッションだと思っています。
野口 課題はたくさんあります。受入側の課題としては訪日外国人に対して「見えない壁」を作ってしまっている方もいらっしゃいます。ただ、最近は以前に比べて訪日外国人を怖がらず、言語がカタコトでも大丈夫と自信を持って、通常通り向き合っている方も増えていると感じております。
オーバーツーリズムについても、個人的には、そこまでオーバーツーリズムになっているとは思っていません。確かに東京や京都などでは混雑していますが、それは春と秋が中心です。夏や冬にはまだ十分余力があります。一方で、春と秋は地方へ送客しなければ受け入れキャパシティが限られてしまいます。そのため、地域への分散だけでなく、季節の分散も進めていく必要があります。
この点において、DMCである我々にできることがあると思っています。「夏は暑いから日本には来ない方がいい」と発信すれば、お客様は当然その時期を避けます。しかし実際には、ヨーロッパの方が暑いこともありますし、日本ならではの夏や冬の魅力もあります。そうした情報をきちんと伝えていかなければ、需要は春と秋だけに集中してしまいます。
野口 ガイド不足は、ずっと続いている課題です。若い人たちの中には、「ガイドは儲からない仕事」というイメージを持っている方も多いと思います。しかし実際には、年間1,000万円近く稼いでいるガイドもいます。例えば、1日4万円で20日仕事をすれば月80万円になりますし、それ以上の単価で活躍している方もいます。
今は20代でも英語を話せる人がたくさんいます。そういう人たちに、もっと観光業界へ入ってきてほしいですね。そのためには、若いガイドがなぜこの仕事を選んだのか、どのような働き方をしているのかを発信していくことも大切だと思っています。